【イギリス】
動物実験の代替法探究を促進する方向へ
AVA-net 海外 ニュース No.107 2004.7-8
翻訳 宮路
イギリスで新設されるセンターは、動物実験代替法の探究を促進するだろう。
金曜日に発表されたところでは、センターでは研究は行わないが、いわゆる3R―置き換え、洗練、削減―に適用するすべての研究のための新しい軸としての役割を果たす。セインズベリー科学大臣は、センターは研究への資金提供や研究の調整を行うハブになるだろう、と着工式で述べた。
しかし、動物実験反対団体の中には、3Rのうちの動物実験の置き換えに焦点を絞っていないことに不満を表明しているところもある。
また、センターの必要性を認めない研究者もいる。ロンドン大学の遺伝学教授スティーブ・ジョーンズは、動物実験に本質的に誤っているところがあると認めることによって、反科学集団におもねっているという。
この国立動物実験代替法センターは、当初、医学研究会議(MRC)の本部に設置されることになっていたが、これには、MRCが動物実験を支持する立場であるために、動物実験反対団体が反対していた。
センターの初年度の予算は66万ポンド(約1億3200万円)で、現在、3Rに使われている予算の2倍に当たるが、MRCの年間予算4億ポンド(約800億円)のほんの小片でしかない。しかし、セインズベリー科学相は、センターが有望な研究案を多数受け付けた場合、その予算が急増する可能性もあるといっている。
■最終目標
動物実験反対団体は、センターが動物実験の置き換えに専念しないことを不服としており、他の2R(苦痛を抑えるための実験の改善、実験に使用される動物の数の削減)を、動物実験をすべて廃止するための障害と見なしている。Rの中で意味をなすのは置き換えだけだ、とAnimal
Aidの代表アンドリュー・タイラーはいう。
一方、セインズベリー科学相は、2つのR、削減と改善の研究への資金提供の決定に関して、置き換えはセンターの最終目標であるが、動物の実験使用が必要である限り、動物の使用を最小限にし、かつ福祉を改善するために、あらゆる努力がなされなければならない、と弁護している。
センターの副所長に就任する予定の獣医師、ポール・フレックネルは、ニューカッスル・アポン・タイン大学での自分の研究は、外科手術を受けたラットに与えるべき痛み止めの量を確定するために役立っており、このようなことこそが「改善」なのだという。
他には、MRCで開発されたマウス用の特別な透明な赤いハウスなどがある。マウスは赤い色を認識することができないため、このハウスが中で巣作りをするのに十分暗いと思うが、研究者には中が見えるので、マウスの邪魔をせずに観察することができる。
また、動物が研究に「協力」するように、サンプル用血液採取の際に腕を自分から差し出すよう訓練するためにほうびを与えるのもひとつの「改善」だ。
セインズベリー科学相は、3Rすべてにおいて、組織工学、細胞を使用しての実験、コンピューターモデルなどの科学的、技術的な躍進は動物への依存を削減するための新たな機会を提供しているという。
製薬会社アストラゼネカの毒物学者デービット・スミスは、業界の視点を提供するためにセンターの設立に参加した。スミスは、彼の会社では、新しい合成物の毒性試験の95パーセントがin
vitro(生体外)、あるいは非動物モデルで行われているという。
2004年5月21日
NewScientist.com news service
http://www.newscientist.com/news/news.jsp?id=ns99995024
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