【イギリス】
動物実験代替法をさらに追及
(動物保護活動家、反発)
2004年5月21日
New Scientist ネットサービス
AVA-net 海外 News (2004.5.26)
イギリスに設立された新しいセンター(実験動物の置き換え、苦痛の軽減、使用数の削減のための国立センター)では、今後、動物実験の代替法がさらに追求されるだろう。5月21日の発表によれば、センターでは研究自体は行わず、いわゆる3R(実験動物の置き換え、苦痛の軽減、使用数の削減)に適合した全ての研究のための新しい拠点としてその活動を展開することになる。「このセンターは、研究を資金面で支えそしてコーディネートする中枢となるだろう」と科学大臣セインズベリー氏は語る。
しかし生体実験の廃止を求める活動家の中には、こうしたアイディアを取るに足らないものとして評価しない向きがある。彼らは、センターの活動が動物の置き換えのみに焦点をあてていないことに怒りを表明。彼らからすると、他の2つのRは動物実験の完全廃止の障壁となっているのである。ロビー団体のAnimal
Aid 代表、タイラー氏は「置き換えが唯一、理に適ったRなのです」と語る。
また研究者の中でさえこのセンターの必要性そのものを否定する声がある。ロンドンカレッジのジョーンズ教授(遺伝子学)は「動物を用いた研究が本質的に間違っているとしぶしぶ是認することにより、アンチ科学派に寝返るようなものだ」と
語る。
センターは、イギリスの医学研究評議会の本部に拠点を構えることになるが、BUAVは、こうした計画に断固反対している。というのも、「MRCにより生体実験賛成というバイ
アスがかかっているからだ」。
センターに充てられる初年度の予算は66万ポンドであり、これは3Rのために最近使われた額の2倍にあたる。しかし、これもMRCの4億ポンドという研究用年間予算に比べればわずかなものである。ただしセインズベリー氏によれば、研究に対する質の高い提案がセン
ターに多く集まれば、それに伴い予算も早急に増える可能性があるとのこと。
同氏は、動物の数の削減と苦痛の軽減に関する研究にも同様に資金を提供するという決定を擁護しながら 「置き換えはセンターにとっての究極の目的ではある
が、動物の利用が必要上続く限り、数を最小限に抑える努力と動物の福祉を改善する努力は必要 不可欠である」と表明。例えば、MRCでネズミのために開発された特殊な赤い飼育舎がある。
ネズミは赤色が見えないため、彼らはその飼育舎を巣ごもりをするのに十分、暗い場所と認識する。従って、研究者は彼らの邪魔をすることなく彼らをチェックすることが可能となる。もう一つの苦痛の軽減方法として、動物を訓練して血液サンプルを採取
するために彼らが腕を出せば褒美を与えるといったものがある。研究を「協働」するというわけだ。
セインズベリー氏はまた、組織工学や細胞試験、コンピューターモデリングといった科学的にも技術的にも革新的な方法が動物への依存を軽減させる新しい機会 を提供するだろうと語る。センターの開場式において工業界の見解を述べたアストラ
ゼネカ(製薬会社)で毒性試験を担当するスミス氏によれば、同企業では新しい化合 物に対する毒性試験の内95%がインビトロ方式あるいは動物以外のモデルを使って行われているという。
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