ブタの肝炎が臓器移植の可能性への打撃に
AVA-net 海外News No.106 (2004.5-6)
翻訳:宮路
イギリス人は、ブタに由来する肝炎に感染している可能性があるという、いずれ、ブタの臓器を使用して臓器移植の順番待ちリストを短くしようとする希望を損なうような仮説が発表された。
イギリスのブタの群におけるE型肝炎の感染状態を調査している獣医師は、その特徴が人間から検出されるウィルスの株に似ていることを発見した。E型肝炎はイギリスではまれな疾病で、年間30から40件ほどしか発生せず、そのほとんどが、衛生状態の悪い発展途上国へ旅行した人々だが、このような途上国では、ブタの群におけるE型肝炎の存在は珍しくない。
E型肝炎は、慢性病を引き起こすこともあるB型やC型と比較すると、通常穏やかだが、妊婦が感染すると劇症肝炎を引き起こすこともある。
政府の獣医学研究所の研究者は、Veterinary Recordという論文誌でE型肝炎は過去10年の間にブタでは定着したように見え、動物から人間に種を超えて感染する場合もまれにあるかもしれないと警告している。ブタはこのウィルスを保有していても発病しないようで、また、人間の保因者が多数いる可能性もあり、E型肝炎は臨床例が示唆するより広範囲に広がっているかもしれないという。
人間に動物の臓器を移植する異種間臓器移植の実現には、まだ数年かかるといわれているが、動物を使用した実験が始まってからしばらく経つ。科学者はヒヒに子ブタの心臓を移植する実験を行ってきたが、この実験が何らかの指標となるのであれば、ブタの細胞が糖尿病の治療に役立つ可能性がある。
しかし、ブタには無害な疾病が人間の体内に移って殺人ウィルスになるのではないかという危惧が長年に渡ってあり、人間がまもなく臓器移植用に遺伝子を組み換えられたブタから心臓、肝臓、腎臓などを移植されるという期待に影を落としている。イギリスでは、近い将来、臨床試験を行うための準備も始められていない。
ベドフォードシャーとサフォークの農場の若いブタから見つかったウィルスは、過去4年以上海外旅行をしていないコーンウォールの患者から見つかったものと非常に似ており、イギリスその他の国で、この他にもブタや人間が感染しているのかどうか、しているとすれば、その範囲や影響について、さらなる調査が必要だという。
しかし、これまでの数少ないデータは、種を越えての感染の可能性を除外することができないことを示唆し、このような動から人間へ感染する可能性のあるウィルスの存在は異種間臓器移植の分野にも関連がある。
The Guardian、2004.2.21
http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,3604,1152907,00.html
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