【ニュージーランド】
動物実験に関する一般説明の準備を進める
ニュージーランドの科学者
AVA-net 海外 News No.105 (2004.3-4)
翻訳:宮路
ニュージーランドの科学者達は、世論の支持を得るために動物実験に関する情報を一般開示する準備をすすめており、昨年末の会議で国会議員に以下の用意があることを伝えた。
- 動物実験倫理委員会が承認したすべての実験研究計画を一般向けの表現で要約して公表する。
- 動物に特定の程度の苦痛を与える種類の実験についてはさらに詳細を公表する。
- 利害関係のない一般市民の動物倫理委員会委員長への任命を考慮する。
主な実験機関を代表する実験・研究に使用される動物のケアのためのオーストラリア・ニュージーランド評議会(ANZCCART)のこの提案では、動物の権利活動家から保護するために、動物実験倫理委員会の会員名は公表しないとしているが、昨年、現行システムは動物実験に「秘密のベール」を被せていると非難した緑の党所属の国会議員スー・ケグリーは、提案は実験決定に一般市民が関与するための第一歩になるという。
バイオエシクス評議会が発表した世論調査によると、乳牛に人間のタンパク質入りの牛乳を生産させようとする草地農業研究所(AgResearch)のプロジェクトのように、他の動物の体内に人間の遺伝子を入れる実験に対してほとんどの人が拒否反応を示している。
バイオテクノロジー業界団体NZ Bio の会長ブライアン・ウォードは、業界側が、動物を使用して開発しようとしている薬について人々により多くの情報を伝える必要があるという。
低コストで非常に多くの治療薬を生産することができるし、多発性硬化症に苦しむ人々にとっては、これから先もおそらくこれ以上のものはないというほど有効な治療法だという。
オークランド大学動物実験倫理委員会の委員長を務める生物学者ドン・ラブ博士は、科学者と国会議員は動物実験を認可する手続きをもっと透明にする必要があるという点で合意しているという。
関心のある人々は、科学文献から動物実験に関する情報を入手することができるが、一般市民には理解できないものもあるため、実験がどういう性質のものであるのかを示す一般市民向けの要約が重要だとラブ博士は考えている。
詳細についてはまだ論議されている段階だが、オークランド大学は、インターネットでの要約公表は実験終了後に行い、研究者名や職場については公表しないことが望ましいとしている。個々の科学者に危険が及ぶ可能性があるので、透明性との兼ね合いは外交的手腕が必要だというのだ。
利害関係のない一般市民が倫理委員会の委員長を務めるべきかについても議論がなされた。
オークランド大学の倫理委員会の12ないし13人の委員のうち、3人以外はすべて大学で働く科学者だが、ラブ博士は、個人的には現行のシステムが機能していると考えているし、委員長の責務は一委員のそれより重い。委員長は会合の議長を務め、フォローアップを行い、申請者を審査し、申請書の評価を行い、手続きの過程においてサポートを提供しなければならない。
ケグリー議員と共に議員の動物福祉グループを結成している与党平議員ティム・バーネットは、すべてがすぐに起こるとは思っていない、情報公開は徐々に進んでいくという。そして、この情報公開は最終目的ではなく、これまでよりは多くの情報を一般に提供するものだとしている。
The New Zealand Herald、2004年1月29日
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