【イギリス】
なぜ霊長類実験が残酷で非生産的なのか
AVA-net News No.104 (2004.1-2)
翻訳:宮路
<連載コラム>医者の日記:モンキー・ビジネス(ごまかし、の意)
ジェームズ・ルファヌ博士
ケンブリッジ大学の霊長類実験施設設立申請については、現在、論争が進行中だが、先週火曜日の投稿欄は、科学者、研究者、そして神経学者までが実験施設設立に反対していることを明らかにした。*
問題の要点は、100年間以上の研究にもかかわらず、科学者は脳が実際はどのように機能するのか、まったく把握していないということを認識したということだ。確かに、優秀な化学者は、数多くの神経伝達物質を識別しており、より精密になったスキャナーは脳のどの部分が何を行うか高精度に撮影できるようになった。
しかし、実際問題として、私たちが電話番号のような簡単なものをどのように記憶するのか、あるいは回りの世界をどのように知覚するかはまったくわかっていない。脳は、いまだに複雑・不可解・不可思議きわまりないものとして人間の理解を寄せ付けないようだ。
これはすべて、自分の研究が有用であるという印象を与えるために何事かを行うことが職の維持に必要な若い科学者にとって非常に苛立たしいことだ。このため、これらの科学者は、疾病か何かの治療法を見つけるという名目で人間の美しいいとこである霊長類に恐ろしいことを行う。
霊長類研究は卒中の治療法開発に何の貢献もしていないのだが、だからといって、研究者はサルの脳を破損し、それがある作業を行なう能力にどのような影響を持つ可能性があるかという実験を止めはしない。
同様に、霊長類の脳は人間のものとは質的に非常に異なるので、アルツハイマー病やパーキンソン病のような疾病の謎が霊長類実験によって解明されるかもしれないと仮定することは不合理だ。クロード・ライス教授や他の署名者が指摘するように、申請中の霊長類研究施設はサルにこれまで以上の苦痛をもたらすことしかしないだろうし、より創造的で有益な研究への資金を流用させてしまうことになる。
*9月23日付けの同紙に、オックスフォード大学やカリフォルニア大学の教授を含む、医師、科学者の連名による霊長類研究施設建設は正当化できない、という題の投稿が掲載された。
Telegraph.co.uk (2003.09.30)
http://www.telegraph.co.uk/health/main.jhtml?xml=/
health/2003/09/30/hdoc30.xml&sSheet=/health/2003/09/30/ixhfeatures.html
Re: Primate laboratory cannot be justified (2003.09.23)
http://www.telegraph.co.uk/opinion/main.jhtml?xml=/
opinion/2003/09/23/dt2301.xml&secureRefresh=true&_requestid=37667
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