【イギリス】
イギリスの国会議員、ハンティントンにおける
異種間臓器移植実験に対する調査を求める
AVA-net News No.104 (2004.1-2)
翻訳:宮路
イギリス議会の委員会は、遺伝子組み換えされた子ブタの心臓を野生から捕獲されたヒヒの首に移植する実験における動物の苦痛度を「中程度」として許可したことについて、内務省管轄の動物実験検査機関に対する調査を検討している。
異種間臓器移植実験は、2000年以前に民間企業イミュトランが、ケンブリッジのハンティントン生命科学研究所に委託して行ったが、漏洩された実験関連書類を入手した動物の権利団体Uncaged
Campaignsとの法廷闘争の後、4月に詳細が公表された。この記録によると、ヒヒの4分の1が「技術的なミス」によって死亡しており、他のものは傷口から体液を流したまま放置され、また、イギリスへの輸送中に死亡した個体もある。
記録には、内務省はイミュトランの実験免許取得が容易になるよう、腎臓移植実験における動物の苦痛度を「中程度」と分類し、実験で動物が「著しい苦痛」を経験することを無視した、と記されている。
内政委員会所属議員は、6月、内務省の動物(科学実験)検査局に書簡を送り、なぜこの実験が「中程度」と分類されたかについての説明を求めた。これに対し内務省は、実験の分類が誤っていた、あるいは動物が「著しい」苦痛を経験したということを否認し、動物に苦痛が生じたことについては議論されなかったが、どの動物も、著しい、除去不可能な苦痛やストレスを経験したとは思われない、と回答している。
Uncaged Campaignsのダン・ライオンズは、政府はいまだに「中程度の実験」で動物が死亡したと認めていないが、死亡は、試験的な薬物投与のもとに行われた移植臓器に対する激しい拒否反応と大手術による著しい苦痛を受けたためで、内務省はこれが通常の手術だったと思わせようとしているが、そうではなかった、という。
これまでに、下院議員143名ほどが、徹底的な独立調査を要求する動議(EDM*)に署名した。この動議の発起人、自由民主党の動物福祉担当議員ノーマン・ベイカー氏は、実験の種類、調査官の人数、内務省の独立性について調べるべきである。検査局には業界関係者が多いので、内部情報に通じており、これは、有用ではあるが、個人的関わりや同情を持つことにもなりかねない、という。
内政委員会のジョン・デンハム委員長は、調査を行うか行わないかの決定は、内務省の回答に対するUncaged Campaignsの対応を待って決めるという。
内務省のスポークスマンは、苦情申し立てについて徹底的な調査を行ったが、さらに独立司法調査を行う必要性を認めるだけの証拠はなかったと述べている。
*EDM−Early Day Motion
通常、審議される見込みのない議員動議の告示。問題への関心を高め、他の議員にEDMへの署名を呼びかける方法として用いられる。
The Guardian (2003.11.11)
http://education.guardian.co.uk/egweekly/story/0,5500,1081922,00.html
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