【インド】
医薬品研究所、動物実験削減のために
コンピューターを導入
AVA-net News
No.102 (2003.9-10)
翻訳:宮路
インド随一の医薬品研究所は、開発中の薬が人間に害があるかどうかを調べるために新しいコンピュータ・プログラムを使用することによって、動物実験を80パーセント減少させることができるという。
政府が管理する中央医薬品研究所は、インドの製薬業界が生産する医薬品のほとんどを開発・研究しており、ニューデリーを拠点とするInvenio
Biosolutions社と共同でコンピューターソフトを開発、7月からこれを使用し始めた、と研究所所長のC.M.グプタ博士はいう。このソフトは、開発中の医薬品が他の研究所ですでに開発中止となっていないか、あるいは商品化されているかどうかもチェックできる。
グプタ博士は、“Drug Discovery Assistant”と呼ばれる新しいソフトは動物実験の数を減少させるだけでなく、医薬品開発のプロセスを速めるだろうとAP通信に語った。「これまで100以上の動物実験を行っていたものであれば、この新しいテクノロジーのおかげで、20しか必要でなくなる」と彼は言う。
動物の権利団体、「動物のための人々の会」はこのニュースを歓迎している。「私たちは、動物実験がなくなるべきであると言い続けてきた。動物実験がなくなる日を待ち望んでいるが、その第一歩が踏み出されたのだ」
医薬品開発は、自然なものであれ人工のものであれ、新しい分子を見つけることから始まる。何千もの新しい分子のうち、5%〜7%の分子だけが、医薬品としての可能性を持っているのだと、コンピューター・プロジェクトを担当しているシンハ博士はいう。これまで、動物実験はこの新分子発見の次のステップとして行われ、新分子の生理学・薬学的反応を評価するために動物の体内に注入されていた。
このプロセスは数年間かかり、動物に注入された薬品のほとんどは有毒、あるいは生体が吸収することができないことが判明し、使用不可能であることが分かった。シンハ博士は、コンピューターソフトを使用し、新しい分子の構造をデータベースと対比させ、このプロセスを短縮できるという。コンピューターは、また、新分子が他の場所でテスト、あるいは使用された分子に似ているかどうかに関する情報も提供してくれる。さらに、身体が新分子に基づいた薬品をどれくらいよく吸収し、どのように新陳代謝・体外放出するか、また、それが有毒かどうか予見することができる。この予備的段階での動物を使用した分子のテストはもはや必要ではないが、薬品を市場に出すためのテストには、まだ動物が使用されるだろう、とシンハ博士はいう。
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