【イギリス】
動物実験委員会、実験用サルを
減らすことが可能、と報告
AVA-net News No.102 (2003.9-10)
翻訳:宮路
イギリス政府の公的諮問機関は、科学の進歩により、いくつかの薬は、サルを実験に使用することなく、ごく少量を人間に与えてテストすることが可能、と報告書で述べている。
この提言は、霊長類の実験が倫理的に正当化することができるかどうか、より有効でコストのかからない代替法があるかどうかについての動物実験委員会の2つの報告書に記されている提言のひとつだ。
委員会は、現在実験に使用されている霊長類、主にマカク、マーモセット、タマリンの数が、製薬会社が老齢期の疾病を治療するために新薬を開発するとともに、増加するのではないかと危惧する。昨年は3,342頭の霊長類が実験に使用され、死体検証のために殺されたが、これは2000年と比べると391頭増えている。現在、ほとんどの実験は、遺伝子にも影響される心臓病やガンのような「生活習慣病」のために行われているが、老齢者に多いアルツハイマーその他の脳障害のための実験へと移行しつつある。
霊長類だけが人間に十分に似た脳を持っているため、薬の毒性や副作用の有効なテストのためには、より多くの霊長類が実験に必要とされるだろうと製薬会社はいうが、科学が進歩により、人間の被験者に投与された微量の薬品が様々な器官のどこに蓄積するか、また、それがどのような障害を引き起こすのかを調べることができるようになった。
この方法を使用すれば、製薬会社は新薬開発のための中間段階としてサルを使った実験を行わずに直接、人間で治験できると委員会は提言する。委員会が動物実験を減少させる方法としてこの他に提言しているのは、生体動物の代わりに人間の組織を使用することだ。実験用に人間の組織を入手することは、子供の親の許可を得ずに器官を取り除いたという、ある病院で最近起こったスキャンダルのために非常にむずかしくなっている。
委員会は、人間の組織を入手するための適切な手順と、死後に提供された人間の組織が、将来、生命を救うために役立つということを親族に説明することで、動物実験を10から15パーセント減少できるという。委員会の最終目標は動物実験の廃止であるが、自分が生きている間には無理だろうと委員長のマイケル・バナー教授はいう。
動物実験を削減するための方法はいろいろあり、行われる実験が必要不可欠なものであることを確認するための厳格な規則と監査制度がなければならない。しかし、望ましくない副作用を起こさずに効果的な医薬品を開発するためには、動物実験をまったく行なわないことは現時点では不可能だ、とバナー教授はいう。
2つ目の報告書では、委員会は、人間の健康に利益があるということが実験動物の苦痛や死を正当化できるかどうかについて考察しており、それが「遺憾ながら必要なもの」であるが、実験を削減するためにあらゆる努力がなされるべきである、と結論付けている。
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