昨年の6月より、管理所でのボランティアを保健所のご理解で日常的に行うことが出来るようになりました。鍵をお預かりして職員の方がいないときでも自由に収容されている犬猫たちの世話をする事が出来るようになったのです。世話をする犬猫達のほとんどをガス室に見送らねばならず、精神的につらい面もありますが、処分されるにしても少しでもできることをしてあげたいと思っております。
5月
4歳のラブラド−ルレトリバ−が持ち込まれた。フィラリア症が重くて治療中だったが飼い主自身も病院通いで面倒がみられないという。飼い主の責任で病気にしたのだからせめて獣医の下で楽にしてあげて下さいと言ったが、この犬あなたにあげるわと言って立ち去った。
保健所からのラブラド−ルの引取りは5頭目になるが、そのうち3頭にフィラリアがいた。なぜ犬を買うときには大金をだすことが出来るのに、その後のケアにはお金をかけられないのだろうか。
ある日犬達がおろされ、コンテナに追い込まれるのを見ていると、一匹の犬が倒れたままなのに気が付いた。死にかけた状態のまま保健所に連れてこられ、そのまま他の犬達と何時間もかけてこの管理所に運ばれてきたのだった。抱き上げて立たせ、ささえながらコンテナまで歩かせた。犬はふらつきながらも足をふんばって立ったままガス室に運ばれていった。
6月
ガス室に入る前に管理所で大往生をした犬がいる。捨てた人へ。あと一週間がんばれば「うちの犬は老衰で大往生しました。」と自慢できたのに。
7月
交通事故で腰をいためてしまった猫を連れてきた年配の夫婦がいた。十数才ということである。獣医に見せることを勧めたが、この夫婦は猫にお金をかけたくないのだ。
またある日、雌のビ−グル犬が収容されていた。今日が処分の日である。ハッピ−テイルに犬の希望者があったので、収容されているこの犬も見せたら気に入ったという。いい人に救われたと喜んでいたら、数日後保健所の職員の方から連絡があり、飼い主らしき人が現れたと言う。残念だけどお返ししてもいいとう事で保健所に連絡を取ってくれると言う。30分後、その人から連絡が入り、結局返さないことにしたと言ってくれた。何か手に持って犬に近づくと異常におびえて震え出すのだという。私は感謝の気持ちでいっぱいだったが、どっちが幸せなのかは犬に聞いてみないと分からない。
9月
子犬を連れた母犬が保護されて管理所にやってきた。母犬とセットで子犬をもらってくれる人はいないかと虫のいいことを考えたが、そのうちに子犬だけ保健所を通じてもらわれていってしまった。母犬は子犬を探して鳴き続けた。哀れだったが結局引き出すことが出来ず、処分になってしまった。
全身疥癬という皮膚病におかされて爪も伸びてねじ曲がっている犬が収容されてきた。哀れで助けてやりたくても、その場の感情だけで連れて来ることは出来ないのだ。
しかし今まで生きていていいことが何もなかったのではと思えるような犬が収容されていることがあり、そういう犬を思わず自宅に連れて帰ってしまう事がある。今は毛も生えてきて元気になり、エサを催促して吠えるまでになった。でも決して自分からは散歩を催促することはない。
10月
収容されている犬達がガス室に入る前には散歩をさせて、一般の方が寄付して下さった肉を食べさせている。そして私自身がひもを取りガス室へのコンテナに入れることにしている。
ある処分の日、どういうわけか既に犬がコンテナに移されていた。うなだれていたが私がかけ寄ると笑った顔になりしっぽを振った。コンテナが動き出すと、犬は少し怯えたように体を震わせ、私の顔を見ながらガス室に入っていった。