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レポート

実験研究者との対話の試み

富山医科薬科大学地域開放特別事業…
動物と人とのかかわり

富山発「バイオサイエンス21」を傍聴して

(AVA-net No.88 2001年9-10月号)

村田美南子(北日本動物福祉協会)

 さる7月27日(金)14時から、富山県民会館にて、富山県民・生涯学習カレッジ連携講座「動物と人とのかかわり」の中で、動物実験についての講演があるらしいということを、前日の26日になって初めて知った。動物実験については、私が動物のための活動を始めた当初の10年前から、とても関心の深い分野だった。が、それは余りにも深く重いテーマであり、動物実験についての知識を深めたいといくら願っても、厚い壁で閉ざされた研究室内部で行なわれている実験に関する真実を知り得ることなど不可能なことだった。

 超多忙な日々の中で、傍聴は無理と諦めていたが、実験者の方々から直接、話しを聞く事が出来る今回のこの機会を逃したくないという思いが強く、当日は10分間ほど遅刻をしてしまったが、息せき切って会場に入った。

本事業が開催された目的と構成

 今回の事業は、動物実験について地域への情報発信の一段階として、富山医科薬科大学付属共同利用施設である動物実験センター・実験実習機器センター・遺伝子実験施設・放射性同位元素実験施設が主催となり、富山県教育委員会・北陸実験動物研究会が後援について企画されたもので、これまでのような動物実験の研究者を対象としたものではなく、より幅広く一般社会人や学生(中、高、大学生)に、動物と人間社会のかかわりを紹介し、“動物と人とのかかわりを考えていこう”という目的で計画されたもので、下記の三部で構成されていた。



【講演1】
医学・生命科学研究と動物                

東北大学院動物実験施設・K教授 

 「日進月歩の医学研究や生命科学研究の半分以上は動物実験を用いた研究といっても過言ではない。科学研究で最も大切なのは「結果の再現性」であり、どこでも、いつでも、誰でも、同じ結果が得られなければ科学研究とは言えない。動物を用いた研究は必ずしも再現性が良いというわけではないが、その主要素は「遺伝」「感染症」「飼育環境」がある。これらの要素をコントロールすることで研究の精度と再現性が格段に良くなった」(抜粋)

 東北大学動物実験センターで飼育されている動物を快適に過ごさせるために、たくさん人が働き、飼育環境にはたいへんな気配りがなされていることをスライドで紹介されたが、何故かマウス、ラット以外の動物の姿はなく、そのような気遣いは真実を伝えるという目的を歪めてしまう…?という思いを持った。

 最後にK教授は、研究者も、動物に出来るだけ苦痛を与えないよう3つのR「できるだけ使用する動物の数を減らす・できるだけ下等の動物を使う・できるだけ動物に苦痛を与えない」を守ることを目標にしている。現場には、研究者による「動物実験倫理委員会」があって、実験者の研究目的、内容などが厳しくチエックされているという説明があった。

■ 私の質問(1)

 大学研究者は大変厳しい縦関係にあるといわれている中で、「動物実験倫理委員会」において、実験のすべてを把握することができるのか、例えば、(1)実験目的、(2)使用する動物種、(3)苦痛の排除方法と実験中の動物の状態、(4)使用頭数、(5)実験結果(失敗も含めて)、(6)研究に必要な金額、(7)動物の終末方法など…。また、不適切な実験として中止勧告、実験途中の動物救済などが行われることはあるのか?

□ K教授の答え

 私の専門である獣医学部における動物実験は、ほぼ掌握できるが医学研究分野については無理…と、私の質問内容にかなり戸惑っておられる様子で、明確な回答はありませんでした。

■ 私の質問(2)

 研究者の願いが国民と同じように、「1.適正な動物実験のために、研究の意義が明確で普遍的であること、2.動物の福祉に配慮し、3.三つのRを守り、動物に出来限り苦痛を与えないよう倫理的に取り扱われていること」というのであるならば、「改正動物愛護管理法」の中での「動物実験の法規制」「実験動物飼育繁殖施設登録」について何故、研究者から強固な反対運動が起きたのか? 矛盾しているように思うが…?

□ K教授の答え

 私は法律のことは余り詳しく知らないのでよく解らない…とのお答えでした。



【講演2】
21世紀におけるバイオ動物とその可能性

東京大学院応用遺伝学・T教授 

 「1997年2月、スコットランドの研究所からクローン羊(ドリー)誕生という偉大な研究報告が成された。このニュースは世界の研究者たちに衝撃を与え、その後日本でも、国や県の畜産試験場で、体細胞核移植によるクローン牛が次々の誕生し、日本における核移植技術のレベルの高さを世界に実証した。人が胚に操作を加えて人為的に作り出したバイオ動物の歴史は、キメラ動物、クローン動物さらには遺伝子導入動物の順に登場し、各種の遺伝病をはじめ、ガン、エイズ、アルツハイマー病などの原因や治療法を遺伝子レベルで研究するための不可欠なモデル動物として利用されている。

 ヒヒ、サル、チンパンジー、ヒツジ、ブタの臓器を人へ移植する異種間臓器移植研究は、今や世界中で行なわれている。また、バイオテクノロジーを駆使して、家畜の品種改良、有用物質を乳汁に分泌する家畜や分泌する家畜や臓器移植用の家畜を開発する研究も精力的に行なわれている。クローン動物の作製に利用されている核移植技術と遺伝子導入技術を利用すれば、より優れた有用動物の開発が可能になる。」(抜粋)

■ 私の質問(1)

 人間の欲望はこれで良しという終わりはなく、「少しでも長生きをしたい」、「少しでもおいしい物を安く食べたい」という欲望は無限に続くものだと思う。先生の講演で言及された、ヒヒやサル、チンパンジーなど人以外の動物の臓器を人間に移植する異種間での臓器移植実験や、遺伝子操作による家畜の品種改良の実験については、社会や国民のコンセンサスが得られているとは、私には思えない。医学科学発展目的の動物実験であろうとも無制限に許されるというものではなく、倫理的見地からの歯止めが必要だと思う。

 医学研究は社会の意識や常識とかけ離れた所で存在するのではなく、全ての情報が社会に向けて正しく公開されるようになって、先ずは何より国民、社会の合意を得る事が必要なのではないのか…?

□ T教授の答え

 (人間の欲望は無限なものだと認めた上で)今も難病で苦しんでいる人が大勢いる。そのような人々を救うためには動物実験は必要だと考える。

 この答えは私の質問に対する答えにはなっていない。また、T教授は私の質問内容にはやはり困惑されているように見受けられたが、実験者の人たちは、はたして過去にも、このような素朴な質問を受けた経験はなかったのだろうか…?


【講演3】
人はなぜ動物と暮らすのでしょう
(動物介在活動と動物介在療法)

赤坂動物病院・S院長

  「人と動物のふれあい運動(コンパニオン・アニマル・パートナーシップ・プログラム=CAPP)は(社)日本動物病院福祉協会が主催するボランティア活動です。人と動物との絆(ヒューマン・アニマル・ボンド=HAB)を大切にする世界共通の理念にも基づいて社会に働きかけを行っている。具体的には、獣医師とボランティアが、正しくしつけられた健康な動物たちを伴って各種福祉施設や学校、病院などを訪問し、ふれあいの場を設けている。これは、高齢者、児童、心身に障害のある方々に対し、精神面とリハビリテーションの手助けをする動物介在療法の実践です。また、社会や教育の現場では動物の温もりを伝え、動物との接し方や思いやりの心を育むお手伝いをしている。」(抜粋)

■ 私の感想

 ここでは、動物たちの人間によせる無垢な愛情が、どれほど人の心に安らぎや力を与えているかを、数々の事例実写スライドを使って説明された。が、先の2つの講演内容とは余りにも対照的で、且つ、感動的な内容だった。主催者である富山医科薬科大学では何を狙ってこのような講演構成としたのか…多分、良くも悪くも、動物は人間に利用されるために存在するのだということを伝えたかったのだろう…?と、私は考えたが、私の邪推だろうか…?

 しかしながら、実験者の方々から、今回のような企画が立案され、一般市民参加を呼びかけて、動物実験について市民の理解を求めていこうとする姿勢については、これまでの権威主義的や密室主義だったことを考えると、今、ようやくここにたどり着いたのかと、その事については素直に喜びを感じた。だが、講演者の方は、会場から私がしたような質問が出るとは予想されていなかったようで、かなり戸惑われていた様子に、私も戸惑ってしまい、質問も、それに対する回答も、中途半端で終わってしまったという感を拭えないでいる。

 21世紀、我国では、小泉首相が、「聖域なき構造改革」を訴え、大多数の国民が不利益を被ることも覚悟で改革を支持している。医学、科学、動物実験分野とて例外ではないはずだ。莫大な税金が投入され、想像を絶する動物の苦痛と命が呑込まれていく動物実験。今、私達は「動物実験を研究者だけに任せておいては、いけない!」という、当たり前の声と願いを、もっともっと社会に向けて発信していかなければいけないのだと思う。

 

 

 

 




 
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