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 HOME > レポート > 飼い主が動物を捨てる理由とは?  
 

レポート

飼い主が動物を捨てる理由とは?

愛護センターにおける犬猫の引き取りについて

AVA−net 105号より

■行政による犬猫の引き取り

 動物の愛護管理法では、犬や猫の飼い主が、何らかの事情で飼育ができなくなり行政に持っていくと、行政はこれを引き取らなければならないとしています(第18条)。

 これは動物を飼えなくなった飼い主が動物を捨ててしまうことが多いということの対策として設けられた規定です。特に犬については、捨てられてから行政が捕獲に乗り出すより、むしろ飼い主自ら保健所などに持ち込んでもらった方が労力の削減になるという考えもあったようです。そのためほとんどの自治体では、犬猫の引き取りを無料で行っており、不用犬猫の回収のための巡回サービスも行われています。

 積極的な引き取りは、確かに犬の捕獲数を減少させるのに役立ってきたのかもしれませんが、他方では、飼えなくなったら保健所にただで引き取ってもらえばいいといった安易な風潮を作り出すことにもなりました。これからの動物行政は、飼い主にその理由を聞いて、飼育放棄の原因をさぐり、対策を取ろるべきと思います。

■動物業者による持ち込み

 近年、ペットショップやブリーダーなどの業者が、犬を行政に持ち込むケースが増えているようです。テレビでもよく取り上げられる「ペットブームの裏側」で、ただ子犬を産ませるためだけに飼育し、産めなくなったら捨てるという繁殖業者は事実少なくありません。これを調べようと、先日大阪の会員のNさんが市へ情報開示請求をして「飼い犬引取申請書」を入手し、事務所に送って下さいました。これによって、狂犬病予防法による登録や予防注射もなしに飼育し、安易に何頭も保健所へ引取申請をしている例が幾つもあることがわかりました(繁殖業者である可能性が高い)。登録や注射をしていないことは狂犬病予防法違反であるにも関わらず、行政側が何ら咎めもせずに引き取っているとしたら問題です。

 事務局で、地元の自治体に開示請求をすることをお願いしたところ、さっそく会員のUさんが神奈川県動物保護センターに「動物引取申出書」の情報開示請求をして、その資料を送って下さいました。その資料をデータ化しまとめてみましたので、一部をご紹介致します。

(表は省略)

■飼えなくなった理由

 この統計を見ておわかりのように、飼い主の都合や勝手な理由でセンターに持ち込まれていることが一目瞭然となりました。例えば、「凶暴」、「おとなしすぎる」、「犬が病気になった」、「犬が高齢となった」、そして「産まれてしまった」という理由。子犬はまだ一般譲渡の可能性がありますが、犬が高齢、病気という場合には、ほとんどが殺処分されるでしょう。15歳以上、中には19歳の犬もいて、そこまで一緒に生活をしてきて、なぜセンターへ持ち込むことができるのでしょうか。それまでの飼育環境がどういうものであったかを考えると、虐待の可能性すらあるのです。

以下に、なぜ動物を飼えなくなったのか、主な「飼養できない理由」(飼い主が記入)の一部を列挙します。

■飼い主の都合

*世話ができない
*飼いきれない
*飼主の死去
*日常生活に支障をきたしている
*飼主高齢のため
*離婚
*病人あり
*老人病気
*母の痴呆がひどい
*親の面倒をみなくてはならない
*飼主の老齢化
*子どものアレルギー
*小さい子どもがいる
*孫が喘息になり飼えなくなった
*アパートのため
*一戸建てでなくなる 
*引っ越し先が公団
*引っ越しで飼えない
*飼主が入院
*夫単身赴任、妻喘息入院
*忙しくて面倒見切れない
*家庭の事情
*独り暮らしで不在が多い
*会社勤め
*飼主が老人ホームに入った
*世話をする人がいない
*飼主入退院繰り返し散歩不可能
*年金生活で犬を入院させられない 

■犬の状況

*成犬でもらいなつかず給餌不可能
*育てるのが困難
*家族になじめない 
*夜鳴き
*家族を咬んだ
*雷の時に暴れる
*狂暴
*咬み癖
*暴れる
*家族を咬む
*小さい頃のトラウマがあり咬み癖
*飼主に従わずこれ以上飼えない
*おとなしすぎる
*家の中を汚す
*脱走する 
*皮膚病
*犬が皮膚病で手に負えない
*24時間吠えている
*散歩できない
*老衰
*高齢(ボケ)
*ガン
*ケガ
*子犬産まれる
*多すぎる
*たくさん産まれたため 
*現在2匹いるので多すぎる
*増えすぎた
*多頭飼育

■飼育放棄された犬の統計データ

平成15年の4月から12月の9ケ月間に神奈川県動物保護センターに持ち込まれで犬について、統計的にまとめたのが上のデータです。数は292頭で、純血種は36%、主に中型犬で、平均年齢は6歳という結果でした。飼育放棄されるのはオスの方が多く、健康な犬が90%です。犬の登録や注射は約半分の犬になされていませんでした。

(データ省略)

■「引き取り依頼書」のチェックを

 「動物引取申出書」は、各自治体によって形式が異なります。自治体によっては、引き取りの際、「飼養できない理由」を聞かないところもありますが、これでは殺処分を減らす対策も取れないことになります。一方、平成15年度より、茨城県では地元ボランティアの方の働きかけで以下のように画期的な書式を導入しているので、ご紹介します。他の地域でもこのような形式とするよう、地元の方々が働きかけていただきたくお願いいたします。

<茨城県:引き取りの際の質問項目>

  • 放棄した犬・ねこは、明日、炭酸ガスにより処分(殺すこと)されることを知っ
  • てますか。
  • かわいい犬・猫を手放すことを家族で話し合いましたか。
  • 新しい飼い主をさがしてみましたか。
  • 親犬・親ねこの避妊や去勢手術を行って下さい。
  • 二度と所有権を放棄するような事が無いように、動物を飼うときは良く考えてください。
  • 放棄の理由:

※引き取った犬・ねこは、県が処分をしますが、所有者のあなたが処分することと同じです。

 

 

 

 
 
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