薬事法改正◆2001年4月化粧品の規制緩和
化粧品の動物実験はますます闇の中へ
これまで日本の化粧品製造は薬事法によって許可、承認という規制がなされてきたが、この4月1日より薬事法改正による大幅な規制緩和が行われ、品質管理(安全性)の責任の比重が、メーカー側に大きく傾くことになった。改正の主目的は、欧米諸国の化粧品製造との整合性を図り、化粧品の国際的な流通を促進することにある。しかし、動物実験が法規制され、情報公開がなされる欧米諸国とは異なり、日本ではメーカーがどのような安全性判定をしているのか、消費者はまったく情報を得ることができない。消費者の健康はメーカーの良心、道徳観にゆだねられているだけであり、法の不備が表面化した形となっている。
●改定の内容
今回の薬事法改正は、主に、(1)成分規制、(2)許可制、(3)成分表示の3点でなされた。
まず成分規制は、使用成分についてのネガティブリスト(使用してはならない成分のリスト)と、ポジティブリスト(使用してもよい成分のリスト)とにわかれた。ちなみに、防腐剤、紫外線吸収剤、タール系色素はポジティブリストにあげられている。(この他、種別毎の承認制が廃止になった。)
許可制については、業態許可は存続するものの、品目許可が廃止になり、品質管理が業者の自主基準にゆだねられることになった。
成分表示は、今までは指定成分(毒性の疑いがある物質)のみ表示されていたが、これからは、使用している全ての成分の表記が義務づけられることになった。これにより、消費者は、成分表示を調べ、自分で判断し、皮膚に有害と思われる物質が含まれている化粧品を避けることができるようになた。それだけに、消費者には、化粧品の成分についての知識が要求されることになる。
●動物実験に関して
従来のガイドラインでは、化粧品原料基準(ポジティブリスト)の中に記載される原料を使用する限り、動物実験のデータを提示する必要がなく、申請だけで化粧品の製造が可能であった。化粧品原料としての使用実績のない新規物質に限り、動物実験による毒性データの提出が義務づけられていた。
しかし今回の改訂では、ネガティブリスト、すなわち配合禁止、あるいは配合制限の成分がリストされ、それ以外の成分は、たとえ新しく合成され過去に使用例のない物質であろうとも、メーカーの判断で使用することが可能となった。動物実験の毒性データに信憑性が薄く、実質的には意味がないという指摘が強かったため、これを廃止し、あわせて海外メーカーの参入の道を開いたわけだ。
●動物実験のデータ公開が必要
欧米諸国では化粧品の安全性について、その責任はメーカーが負っている。しかし、化粧品製造についての安全性評価は、欧米諸国と日本とでは全く異なる。欧米諸国では動物実験および実験施設の審査制や許可制があり、実験記録の報告義務がある。それらは情報公開の対象となる。
しかし、日本では動物実験に対するいかなる法規制もない。いつ、どこで、どのような機関が、どのような動物を使って、どんな実験をしているのか、実態がまったく不明である。
安全性(毒性)については、メーカーの「安全性は確認しました」という言葉を信じる以外にすべがない。
化粧品を利用する者、消費者への情報提供が勧告されたが、合法的に消費者が安全性(毒性)を判断する手段はなにもない。国内の体制をまったく整備しないまま、外圧に屈して表面的な国際化を図る国のやり方は、やはり問題だ。
規制緩和によって、新規成分については動物実験のデータ添付が義務付けから外されるため、原料メーカーはコスト削減のために、代替法に切り替えたり、実験を行わなくなる可能性はある。しかし、その一方で、化粧品被害が起こった際、消費者からの苦情を避けるために、化粧品メーカーが自主的によりいっそう動物実験を行う可能性もある。
欧米諸国のように、動物実験の免許制や監視制があれば、メーカーの実験について何からの情報を得ることができるが、何ら法規制のない日本の現状ではそれさえ不可能だ。動物実験の実態が把握されることさえなく、ますます闇の中に隠れていくことが危惧される。
化粧品の実験データの公開、および動物実験を行っているすべての施設に関して、情報公開制を設けるとともに、実験の法規制を行うことが急務である。
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