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動物実験を減らすためのライフスタイル

シンプル・イズ・ベストの心がけ

〜化粧品の選び方〜

北村 孝至

 AVA-net、ALIVEの会員の方々から動物実験をしていない化粧品会社のリストが欲しい、動物実験をしていない企業を教えて欲しいというご質問、ご要望をよく頂きます。会員の方々だけでなくだれもが動物実験していない安全な化粧品を望むようになればそれは企業を動かす力となり、やがては化粧品会社から意味の無い動物実験は消えてなくなることになります。一人でも多くの方に関心を持っていただきたく思います。

 しかし消費者の意識が高まる一方で、企業側では動物実験についての認識が低く、依然として多くの実験が行われているのが現実です。その様な中で私たちはどのような製品を選び、またどのように企業に消費者の姿勢を示していけばよいのでしょうか。化粧品の選び方を考えてみたいと思います。


企業のポリシーを問いかけよう

 海外の先進国では化粧品に動物実験をしないのは当たり前という認識が高まり、「No Animal testing」など動物実験していないことを明示した商品が市場を席巻するまでになりました。しかし、残念ながら日本では動物実験に積極的に反対する姿勢を明確に打ち出している企業は極めて少なく、全国を見渡しても数社しかありません。

 また、動物実験には反対です!と声高らかにうたっても、単に動物実験しない化粧品を求める消費者をターゲットに商業主義的に主張しているだけであれば、当会ではお勧めすることはできません。まして、合成着色料、合成香料などの化学物質に依存した化粧品を販売しているのであればなおさらです。

 (株)ミス・アプリコットは動物実験に反対し安全な化粧品を市場に出すことを目的に、AVA-netの前身が母体として発足した会社です。動物の命を犠牲にしない姿勢が貫かれており安心して使える製品を作っています。お勧めできる数少ない企業のうちの一つです。


動物実験は、製品ではなく、
新規原料の開発に義務付けられている


 自分が使っている製品が、動物実験されているかどうかを知るためには、直接企業に動物実験しているかいないかを尋ねるのが一番簡単です。その場合、「わが社は動物実験をしていません」と回答を得たとします。

 この言葉をそのまま信じることができればどれほどいいでしょうか。実際は、この言葉の裏にあって表には出てこない言葉を見抜かなければならないのです。

 「わが社は動物実験していません。実験はすべて子会社に委託しています」

 これでは動物実験しているのと同じです。


 「わが社の製品では動物実験はしていません。しかし、原料では動物実験しています」

 これも同じです。

 これを見ると、単に「実験していない」という回答を得るだけでは不十分だということがおわかり頂けると思います。実験していないという答えを得たら、「なぜ動物実験をしないのか?」を尋ねてみましょう。「製品だけでなく、原料もしていない、なぜなら動物実験は必要ない、反対しているから」という企業のポリシー、理念を聞ければ、その企業は評価できるでしょう。


市場を独占する大手数社が
実験している限り、
動物の犠牲はなくならない

 意外かもしれませんが、動物実験を行っている化粧品メーカーは多くはありません。日本の化粧品は大手メーカー数社の寡占状況といって良く、それら大手企業が実験を行っているために、多くの消費者は動物実験を行っている企業の製品を購入していることになるのです。

 逆にいえば、比較的小さなメーカーであれば動物実験は行っていないとみてまず間違いないということです。ただし、製品で動物実験をしていなくとも使っている原料で動物実験を行っている危険性があります。そこで動物実験している原料を使っているかどうか、その点を見極める目を持つことが必要です。

 ちなみに中小のメーカーが動物実験をしない理由は大きく分けて3点あります。

 一つは、動物実験は新しい原料を開発し使う場合に義務づけられており、製品の段階ではかならずしも必要ないこと。二つ目はPL法が施行されクレームが発生した場合はメーカーの責任となるため、いくら「動物実験で安全性を確認した」と言い訳してもそれがクレームの責任逃れにならないこと。三つ目はメーカーの実力の問題で新規化学物質を合成する設備、施設、能力を持たない、あるいは動物実験にかかる費用を負担できないことによるもの、以上の3点です。

 いずれにしてもこれだけでも企業の大小にかかわらず動物実験など化粧品の製造にまったく必要ないことがご理解いただけると思います。


昔から使われている原料を使えば、
動物実験は必要ない

 化粧品の製造、取り扱いを規制する薬事法が制定されたのが昭和35年で、その後昭和42年に化粧品品質基準による「化粧品原料基準」が定められました。いわゆるポジティブリストというもので、このリストに記載のある物質は安全性が確立されているとして、メーカーが自由に使うことができます。このリストに記載の無いもの、すなわち新しく合成した化学物質で毒性の明確でないものを使う場合は動物実験のデータを添付しなければならない、ということなっています。

 言い換えれば昔から使われてきた原料で実績のあるもの、安全性の確立されたものはそのまま使ってよい、新しく合成された化学物質で毒性がわからないものは動物実験のデータをつけなければならない、ということです。

 化粧の歴史は人類の歴史とともに始まったといわれています。その長い歴史の中で様々な天然の物質が化粧品として試され、その中でスキンケア効果の高いものが発見されてきました。トラブルを生じたものは排除され、安全性の高い天然色素や顔料が生き残り、その効果的な使い方が追求されてきたのです。現在もそうした原料を使っている限り動物実験は必要ありませんし、また安全性が確立されているため私たちの肌にトラブルをおこす危険性も低いのです。


重要なのは消費者の意識

 自然な原料を使った、可能な限りシンプルな化粧品を選ぶようにすれば、動物実験はまったく必要ありません。「そうはいっても華美な化粧品ばかりが目につく中で、シンプルな化粧品など本当にあるのだろうか?」そう思われる方も多いのではないでしょうか。

 実は化粧品を選ぶ前にどのような化粧をするか消費者自身の意識が問われています。このメーカーなら良いとか、あのメーカーが悪いということよりも、消費者自身がどのような化粧をしようとしているのか、使い手の意識がもっとも大切です。この認識が明確であれば、実は自然と動物実験していない化粧品に行き着くのです。

 化粧水は植物性のもので良いものがたくさんあります。代表格は西洋でいえばローズマリー、東洋ではへちまということになるでしょうか。この他、カモミール(かみつれ)、すぎな、はと麦(ヨクイニン)、カンゾウ、柑橘系のものなどすばらしいスキンケア効果を示しますし、この他にも数え切れないくらいあります。こうした植物性の化粧水は自然食品店やエコロジーショップで購入することが可能です。

 乳液、クリームは基本的には薬とみるべきで、肌が乾燥した時、かさついた時など肌にトラブルが生じた時に使うのが原則です。常用しますと肌の皮脂を分泌する力が衰えます。あくまで冬などの乾燥期、季節の変わり目や体調を崩した時などで肌の油分を補う時に使います。ホホバ、オリーブ、桃、あんず、やし類、アボガド、キャンデリラなど植物油、あるいはロウで化粧用に販売されているものであれば問題ありません。

 メイクアップはあくまで最小限に。ファンデーションは水性のものを。油性はタール系色素(合成着色料)が主体になります。水性であれば無機顔料が使えるので肌への負担は少なくなりますし、紫外線防止効果も期待できます。リップはベニバナ色素で発色したもの。使用する際に下地クリームを併用すれば完璧です。

 この他、シャンプーはせっけん、リンスは酸性のもの。リンスはお好みによって植物油をベースにしたものでもかまいません。体を洗う固形石鹸は無香料、無着色のもの。

 基本的にはこれだけで必要なものはだいたい揃っているはずで、こうした自然のものを選択していけばトラブルを発生させる危険性はほとんどありませんし、また言うまでもなく動物たちに不必要な犠牲を強いることもないのです。

 合成着色料、合成香料など化学物質を体中に塗るかどうか、それは消費者一人一人の選択です。


求められるバランス感覚

 生体にとって非常に大切なのはバランスです。いくら安全性に問題のないといっても単一の物質を多量に摂取すれば体の健康は損なわれます。逆に多少毒性のあるものであっても摂取する量が充分に少なく、肝臓や免疫機能などで無毒化し体が防御できる範囲であれば害は発生しません。まずどれくらいの濃度でどれくらいの量を使うのか、摂取するのか、それを前提にし、加えてその物質の毒性を勘案するようでなければ本来の意味で安全性を考慮したとは言えません。

 これは化粧品に限らず食品や日常の生活の中で使っていくさまざまなものにも共通して言えることです。安全性が高いといわれるものでも大量摂取、大量消費は危険です。

 合成化学物質に依存しない生活を心がけること、それがあくまで基本ですが、現在の社会の中で完璧に合成化学物質を排除することは不可能です。その中ではまず大量に使用している化学物質、不必要な化学物質、それらの使用をやめていくようなライフスタイルが求められています。


 

 

 

 
 
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