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 HOME > ライフスタイル > 化学物質に依存しすぎないライフスタイルへ(1)   
 

動物実験を減らすためのライフスタイル

動物実験廃止・全国ネットワーク(AVA-net)からの呼びかけ

化学物質に依存しすぎないライフスタイルへ(1)

(2003.1)  野上ふさ子


●何のために動物実験が行われるか
 
 ある統計によると、動物実験が行われる分野とその割合ははおよそ次のようになっています。(ただし、日本では動物実験の統計の根拠となるべき実験の届出制や実施者の登録制等の制度がまったくないため、あくまで推計です。)

 1、化学物質の毒性試験     26%
 2、ワクチンの検定など      21% 
 3、生物医学研究          40%
 4、教育実習              8%
 5、その他               6%

 最も多くの実験が行われ、動物の犠牲数が最も多いのは、医薬品の開発やワクチンの検定も含めた「化学物質の毒性試験」の分野です。

 戦後、世界は工業化の道を暴走していますが、その中でも大きな地位を占めるのが石油化学工業の発展です。 現在、人間が作り出した化学物質の数は、100万とも1000万種とも言われており、無数の化学物質が乱開発されてきました。これらの人工的化学物質が生命体ばかりでなく、生態系に与えている悪影響ははかりしれません。

●化学物質の毒性試験

 特に、私たちが直接食べたり、飲んだり、皮膚に付けたりして体内に取り入れる化学物質ついてはその毒性(安全性)を確かめるために、動物実験を行うことが法律で義務付けられています。例えば、私たちの日常の暮らしに直接関わるもので、かつて動物実験が行われたか、またはこれからも行われる可能性のある製品には、次のようなものがあります。

●医薬品

 医薬品には、風邪薬など家庭用医薬品として薬局で買うものと、医師が処方して指定の薬局で購入するものとがあります。家庭薬は、処方薬よりは一般に効果が弱く、従ってそれだけ副作用も少ないものとされています。
 一方、処方薬は、高い効果を求めると同時に副作用も強いので、危険性の度合いが高くなります。この新薬の開発のため、おびただしい実験動物が犠牲となります

●洗剤の実験

 家庭用洗剤は、経皮的に体内に摂取されやすい化学物質です。シャンプー・リンスなど直接肌につけて洗うものについては多くの動物実験が行われます。そのほかに、台所洗剤、トイレの洗剤、タイル磨き、床磨き、漂白剤、かび落としなど、こまごまと用途が分かれた洗剤などのためにも動物実験が行われます。
 また2種類の洗剤を併せて使うと化学反応を引き起こして有毒ガスを発生する場合などもありますので、そのような場合も想定して実験が行われます。

●化粧品の実験

 2001年から化粧品は全成分表示となり、使用されているすべての原料成分がラベルに書かれるようになりました。これを見ればわかるように、化粧品は何十種類もの化学物質を混ぜ合わせたもので、化学物質のかたまりと言っても過言ではありません。
 中でも、長時間肌に塗ったままにしておく化粧水、ファンデーション、口紅などについては、皮膚を通して吸収される化学物質の毒性のための実験が行われます。また、人の眼の中に入る恐れのあるクリーム、マスカラなども眼粘膜刺激性試験を行います。

●農薬の実験

 日常的に広く使用される化学物質の中でも最も毒性が強いものが農薬です。戦争中に毒ガス兵器として開発研究されていたものが、戦後は農薬に転換されました。農薬はもちろん農作物を食べる微生物や昆虫などを殺す薬です。しかし、「害虫」を殺すばかりでなく、「益虫」も無差別に殺傷します。また、虫を食べる鳥たちに生体内濃縮するなど、食物連鎖を撹乱したり、広範囲に及ぶ生態系を破壊し続けます。かつてレイチェル・カーソンは「沈黙の春」の中で、「春が来ても鳥は鳴かない」と、農薬による生態系への汚染と生物の連鎖の破壊を厳しく警告しました。

 農薬は田畑に散布されるばかりでなく、家庭用殺虫剤としても使われています。ダニ、ハエやカ、ゴキブリ退治のスプレー、薫煙剤、蚊取り線香、電気蚊取りマット、衣類の防虫剤、防かび剤、抗菌・抗臭加工などなどの農薬が住まいを危険なものにしています。電車やバスでも薫蒸が行われ、知らずに乗車して具合が悪くなることもあります。シロアリ駆除剤は土壌や地下水を汚染しています。

●食品の実験

 私たちが日常的に摂取する食品にもさまざまなな形で化学物質が添加されています。例えば、食品を長期間腐らないようにするための保存料、色合いを鮮やかに見せる着色料、風味を出す香料、粘着性を出す糊料などが食品の中に添加されることが許可されています。(※着色料、発色剤、漂白剤、光沢剤、香料、調味料、甘味料、苦味料、酸味料、増粘剤、安定剤、殺菌剤、防カビ剤、防虫剤、酸化防止剤、乳化剤、膨張剤、皮膜剤など合成添加物358品目)
 もちろん、動物実験をしたからといって安全だとは言えません。
 
●包装容器の実験

 タッパーなどポリ容器の中には塩辛いもの、酸っぱいものなどを入れると、その酸性や塩分によって容器が浸食され、溶剤が説け出す恐れがありますので、これも動物実験が行われます。

●おもちゃの実験

 子供たちは、おもちゃをなめたり噛んだりします。その時に、色付きの塗料やプラスチックの溶剤が溶け出して、飲み込む恐れがあります。そのようなもののためにも動物を使って実験が行われます。

●文房具

 文房具も子供たちがしばしば口にしやすいものです。「清潔」志向のために、抗菌剤入りのノートや消しゴム、鉛筆などが製造されています。菌を殺す薬品というのは農薬の一種で、やはり毒性がありますから、そのために動物実験が行われることになります。

●嗜好品

 タバコが有害であるか有益であるかを巡って、またもや動物実験が行われています。立場が異なればどうとでもなるデータ作りのために、無益な実験が繰り返されています。
 アルコールも同様です。本来、アルコールを飲まないサルを使ってアルコール中毒にする実験や、またアルコール忌避剤の研究が行われています。

●建築資材

 最近、化学物質過敏症の人が増えています。せっかく建てたマイホームなのに、入るとアレルギーを起こしてしまうので、他所に古いアパートを借りている人もいます。新建材には、塗料、壁紙、接着剤、など、さまざまな化学物質が使われており、それらの複合汚染によるものです。単一の物質ならともかく、これだけ多くの化学物質が混合すると、予測できない危険性をもたらすことになります。

●環境汚染物質

 環境汚染の結果として、最近は環境汚染物質の毒性を調べるために、大気中の煤塵・排気ガスの毒性を調べる実験や、水道水中の発ガン物質を調べる動物実験が、増大しています。
 従来の新規化学物質の製造に関わる法律では、単に人体への毒性を調べるだけでしたが、これからは生態系への悪影響も審査に含めることが検討されています。

●体内に入る化学物質

 これらの化学物質は、次のような状況で私たちの体内に取り入れられることになります。体力が衰えている人や敏感な体質の人にとってはアレルギーの原因ともなります。発がん性が疑われている物質もあります。

◎経口で(口から)体内に入る化学物質
 ・食品(合成保存料・着色料・糊料、など)
 ・畜産食品(抗生物質・ホルモン剤・農薬、など))
 ・水道水・地下水(農薬=除草剤・殺虫剤・殺菌剤・肥料・洗浄剤、など)

◎気道で(鼻から)体内に入る化学物質
 ・居住区間(塗料・壁紙・接着剤・農薬、など)
 ・労働環境(工場内使用物質各種)
 ・大気(煤塵・排気ガス、など)
 ・タバコ

◎経皮で(皮膚から)体内に摂取される化学物質
 ・化粧品
 ・家庭用品(シャンプー、リンス、クリーム、など)
 ・建築資材(壁紙・塗料・など)
 ・装身具(金属アクセサリー、など)
 ・日用品(文房具、抗菌グッズ、など)

 仮りに、一つ一つの化学物質が動物実験である程度の「安全性」が判明したとしても、これほど多種多様な化学物質が複合的に作用した場合はどうなるのかはほとんど不明です。
 動物を使って、実験室という閉ざされた場所で、ごく限られた条件の下で行われる実験結果をもって、人にも環境にも「安全」だということは、かえって危険ではないでしょうか。

 これほど多くの動物実験をしなければならないような新規化学物質入りの新製品の製造を、もう止めてほしいと願わずにはいられません。

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