●実験動物の飼養保管基準の改正
今年の6月に改正された動物愛護管理法に基づく「実験動物の飼養及び保管等に関する基準(昭和55年3月27日総理府告示)」が、ようやく25年ぶりに改正されることになりました。今回の法改正で、これまでの実験動物の苦痛の軽減の義務に加えて新しく、動物を使わない方法に置き換えること、及びできる限り実験に使用する数を削減することが配慮事項として明記されました。(あわせて3Rの原則)
環境省では、当初から、実験動物の適正管理等については動愛法の所轄であるが、動物実験の方法は文科省等の実験実施機関の所轄であるとして、動物実験という行為と、実験動物の福祉を切り分けようとしてきました。その結果として、代替法と使用数の削減については「配慮事項」にとどまってしまいました。これは欧米諸国の法律が、動物実験の規制によって実験動物の福祉をはかるという原則に基づいている点とは大きく異なるところです。
ある意味で「倫理」は「科学」に口出しせずという姿勢であり、これだけ医科学研究における倫理の荒廃、不正事件が多発している現状にあっては、はなはだ時代遅れだとしか言いようがありません。
●国際水準にまでレベルアップを
ともかく四半世紀ぶりの改正になりますので、先進諸国のレベルに合致するような大幅改正でなければならないと思います。科学研究そのものは、ある意味で最も国境のない世界です。すなわち、その実験は、どこの国の、どんな研究者が、どの実験施設で行ったとしても、同じ結果が出なければならず、この「普遍性」「再現性」こそが科学が科学である所以であるからです。科学実験においては実験条件が均一的であることが必須です。そのために、医薬品開発等においてはGLP(Good
Laboratory Practice)という国際基準が定められており、施設の基準や使用する実験動物の均一化が図られています。
実験条件の均一化のためには、実験施設の基準とともに実験動物の飼養保管基準、使用される実験動物の均一化も図られなければなりません。日本「独自」の実験基準などというのは、本質的に科学の世界ではあり得ないのです。日本の実験基準が国際基準に適合するものでなければ、科学的信頼性を得られないでしょう。