2005年6月、1999年の改正から6年を経て、動物の愛護管理法が改正されました。動物実験に関する条項についてお知らせいたします。
■動物実験は大きな争点だった
今回の動物愛護法改正の論議の中で、最も大きな争点となったのが、動物実験の問題でした。これは1999年の改正時でも議論されたもので(残念ながら、法案成立に関しての国会質疑が行われなかったこともあり、議論の詳細は記録として残されていない)、今回は当初から国会議員の方々も、動物実験について何らかの取り組みが必要だという認識をもっておられたようです。動物保護団体の多くがそれを期待してきましたが、しかし、関係機関との意見調整の中で、どんどんしぼんでしまったように感じられます。
民主党では、動物実験における動物福祉の原則3Rの明記と、その実効性の確保のために実験施設の届出制を提起していましたが、「抵抗勢力」の力が大きく、届出制さえも実現できませんでした。欧米諸国では動物保護法の中で実験施設を登録制ないしは許可制としており、日本のみはいまだ届出制さえないというのでは、とうてい国際社会でのリーダーシップを取ることはできないでしょう。(科学研究の条件の国際標準化くらいしておくべきではないか!)
■はじめて3Rの原則を明記
今回の法改正ではじめて、できだけ動物を使わない方法を取ること、また使う場合でもできる限りその数を減らすようにすることが「配慮」事項として定められました。
これに従来の、できる限り苦痛を与えない方法をとることを加えて、動物利用における3Rの原則といい、広く国際的な基準や指針に採用されているものです。欧米で動物実験の3Rが提唱されてからすでに50年以上を経ていますが、日本でもようやくこれが法律に明記される時が来たということが言えるでしょう。
■1Rと2Rの差別化
それでは、この明記によってどの程度の変化を期待できるでしょうか。第2項の「苦痛の軽減」の条項は「ねばならない」という義務となっていますが、第1項の「代替法の採用・使用数の削減」条項は、「配慮するものとする」となっており、第1項よりは弱い内容になっています。
また、第4項に定められている基準は、第2項を対象としており、第1項は含まれていません。
このことから分かるように、この法律は動物実験に対しては、代替法の採用や使用数の削減をお願いするものではありますが、それについては強制する立場にはなく、基準を設けることもないという限界を示しています。
医科学研究者たちは、日本はヨーロッパ諸国のように動物実験を厳しく法規制する道を取るべきではない、アメリカのように研究者の自主規制で行う道を進むべきと主張しています。しかし、これはアメリカの法律を誤解しているとしか言いようがありません。アメリカの動物福祉法は、実験施設を登録制として、実験動物業者は一般の動物取扱業者と同様に許認可制です。そして各施設内には動物実験委員会を設置しなければならず、委員会は少なくとも半年後ごとの査察を行います。研究施設は3Rの訓練を課せられており、国は3Rに関する情報を提供することが義務づけられています。
いま、ISO(国際標準化機構)やOECD(国際経済開発機構)、OIE(国際動物保健機構)など多くの国際機関が、科学研究における国際標準化の方向に向かっている中、「先進国」の一員であるはずの日本のみが、なぜいつまでも、この分野では遅れをとっているのでしょうか?
「動物の愛護及び管理に関する法律」における動物実験条項の改正部分(下線)
(動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等)
第41条 動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する場合には、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用することに配慮するものとする。
2 動物を科学上の利用に供する場合には、その利用に必要な限度において、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない。
3 動物が科学上の利用に供された後において回復の見込みのない状態に陥っている場合には、その科学上の利用に供した者は、直ちに、できる限り動物に苦痛を与えない方法によってその動物を処分しなければならない。
4 環境大臣は、関係機関の長と協議して、第2項の方法及び前項の措置に関しよるべき基準を定めることができる。