<資料>
EU(ヨーロッパ連合)における
動物実験規制法の概要
理事会指令 86/609/EEC(1986年11月24日)
*指令は、加盟国が自国の国内法として制定することを義務付けるもの。
これは、実験その他の科学的目的に使用される動物の保護についての加盟国の法、規則、行政措置の概略を定めたもので、実験動物保護についての共同体レベルでの主要措置である。ここには欧州協定と同様の規定が盛り込まれている。主な条項をあげる:
・動物の実験利用は特定の種類の目的に限定すること。
・動物の一般的ケアと収容の条件として、飼育舎、環境、給餌・給水、ケアについて規定し、生理的・行動的欲求の制約を制限している。
・環境条件は毎日チェックすること。
・動物の健康と福祉を資格のある者が監視すること。
・欠陥や苦しみは発見されしだい除去/修正すること。
・実験は資格のある認定された者だけが行うか、もしくはその者の直接の責任下で行うこと。
・満足できる代替法がある場合には、動物による実験を行わないこと。
・使用する種を慎重に検討すること。
・動物数を最少にとどめ、苦しみを最小限に抑えること。
・野生由来の動物による実験は、他の動物では目的が満たせない場合に限って行うこと。
・ストレスや不必要な苦痛を避けられるように実験計画を立てること。
・すべての実験は(特定の例外を除き)全身麻酔もしくは局所麻酔下で行うこと。
・麻酔が不可能な場合は、鎮痛剤その他苦痛をやわらげる手段をとること。
・麻酔された動物が麻酔が切れかかり苦しんでいる場合は、(実験目的と相いれない場合を除き)鎮痛剤で処置するか、または人道的に殺処分すること。
・実験終了時、苦痛や苦悶の長引く状態が続きそうであれば、その動物を人道的に殺処分すること。
・実験終了時、動物を生かし続けるつもりであれば、その健康状態に応じた(獣医が)ケアを行うべきである。
・苦痛をともなう実験に2回以上同じ動物を用いてはならない。
・加盟国は実験の事前届け出制を確立すること。
・動物の苦痛が長引く恐れのある実験は、実験の詳細を届け出て免除措置を受けるか、主務官庁の認可制度を通さなければならない。
・統計情報の提供と記録の管理・保持に関する条項。
・実験や実験動物のケアに携わる者は適切な教育・訓練を受けなければならない。
・繁殖・供給施設の承認・登録を(適切な動物の状態とケア、訓練されたスタッフ、記録保持などを条件に)行うこと。
・供給施設は、登録された繁殖業者以外からは動物を購入しないものとする。
・野良犬猫や、再野生化した動物を実験に用いないこと。
・犬、猫とヒト以外の霊長類は、すべての繁殖、供給、使用者施設において1頭ずつ識別・登録すること(移動時には完全な記録を添える)。
・犬、猫とヒト以外の霊長類は、1頭ごとに由来を含めた明細を記録すること。
・使用者施設は主務官庁に(設備、用具、設計、構造、方法などの規定をみたす条件で)登録を行うこと。
・使用者施設は十分な数の訓練されたスタッフを雇用すること。
・動物福祉の責任者を選任すること。
・獣医の助言と治療が受けられるように手配し、獣医顧問を選任すること。
・加盟国および委員会による記録の保管と検査について規定した条項。
・相互確認−−加盟国は、他の加盟国の実験データを把握して、不必要な実験の反復を避けるようにすること。
・加盟国は、動物実験代替法の開発と立証のための研究を奨励すること。
<付録>の内容は以下の通りである:
・第21条(専用に繁殖された動物)で規定された実験動物のリスト。
・動物の収容とケアに関する指針(ケージの最小寸法など)。
理事会決議(1986年11月24日)
これは、実験その他の科学的目的に使用される脊椎動物の保護のための欧州協定への加盟国の署名に関するものである。協定未署名の加盟国に対し、できる限り早急に署名するよう求めた措置である。
決議(1986年11月24日)
これは、実験その他の科学的目的に使用される動物の保護に関するものである。この措置は、指令
86/609/EECの範囲に収まらない実験を対象としている。実験の目的を規定し、これらの実験を規制するため、加盟国は指令
86/609/EECの規定と少くとも同程度に厳重な国内措置をとらなければならないとしている。
委員会決定 90/67/EEC(1990年2月9日)
これは、実験その他の科学的目的に使用される動物の保護に関する諮問委員会の設置に関するものである。指令86/609で規定された情報交換の組織化を支援し、当指令の適用にかかわるその他の事柄を補佐する、委員会付属の諮問委員会の設置を定めている。この諮問委員会には加盟国から各々2名の代表が送られ(加盟国の任命による)、その任期は5カ年である。
ALIVE資料集 No.5 海外の動物保護法【EU編】より
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