動管法改正、しかし
動物実験の問題は放置されたまま…
AVA-net会報78号/2000.1-2月号
動物実験の規制は
なぜ、なされないのか?
野上ふさ子
昨年12月14日に、長年の間私たちが求め続けてきた動管法の改正が国会で成立しました。罰則の引き上げや動物取扱業の規制などについては一定部分で前進しましたが、これまでお知らせしてきたように、動物実験に関する事柄は、まったく改正が行われませんでした。(ALIVE会報No.30を参照ください。)
今回の改正に動物実験関係の条項が何も入らなかった理由は、動物実験施設協議会など実験者側の諸団体が「動物実験を規制すると科学の研究に支障が出る」と主張し、それを受け入れた自民党が強硬に反対したからです。そればかりか、自民党は「動物の法律を考える連絡会」に対して、いつまでも動物実験の規制を求めるならばこの法改正自体を上程しないと通告し、脅しとも言うべき姿勢で臨んできました。民主主義を名乗る政党とも思えない態度ですが、動物実験への批判を封じ込めようとするこのような力が動いていることは、裏返せば、日本の実験者団体がそれほど動物実験の規制を恐れているということであり、それほど無意味で残虐なことが繰り広げられているからだということに他なりません。
欧米諸国では、何十年も前から実験者、実験施設の免許制、実験計画の審査制等を取り入れて、動物実験に対する社会的な批判に対処しています。こういう規制があるから欧米諸国では科学研究が遅れているなどと言ったら世界の笑いものになるだけでしょう。科学研究はまさに国際基準の世界であり、医薬品の開発などでは国際的に認可された基準に合致していなければ通用しません。
動物のケアもない劣悪な施設で、研究者の好奇心のままに、保健所から払い下げられた犬や野生の霊長類を実験に使っているような「先進国」は日本だけです。日本で年間2000万匹もが犠牲にされている実験動物を保護するための法律が今なおないも同然だというのは、韓国や台湾以下であり、日本が依然としてアジアの後進国だということを物語っています。これで国際社会における日本のイメージは、基本的な動物保護さえできない国としてまた一段と悪くなったことは間違いありません。動管法は人が飼育するすべての動物に関わる法律なので、実験動物、畜産動物と言えども、みだりな殺傷や虐待が行われた場合には、当然この法が適用されます。しかし、実験動物の保護が最も困難な理由は、それが密室の中で行われるということにあります。
それ故に、私たちはこれからもできる限りの情報の公開を求め、密室の中で行われている動物実験の無意味さや残虐さを明らかにしていかなければなりません。また、最低限、「実験動物の飼養及び保管に関する基準」を改定し、動物の福祉の向上を求めていく必要があるでしょう。
届け出を必要とする動物取扱業者から実験動物業が除外されているため、今後はよりいっそう、実験動物の繁殖・販売・保管業や、ペット盗難を引き起こす悪質業者への監視もしていかなければなりません。今回の改正法は、付則として5年後の見直し条項があります。
5年後の改正には必ず動物実験の規制を盛り込めるように、また決意を新たにして活動を続けていきましょう。
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