全国自治体の動物愛護管理推進計画における
実験動物福祉への取り組み
AVA-net News No.147 2011.3.4
AVA-netでは、このほど、「全国自治体の動物愛護管理推進計画における実験動物福祉への取り組み」の資料集を発行しました。
動物実験施設について、現在の動物愛護法には具体的な制度は何もありませんが、2005年の法改正の後に定められた国の指針の中で、実は動物実験施設の実態把握につ
いてが述べられています。
そして、その指針に即して制定された各都道府県の動物愛護管理推進計画(以下、 推進計画)の中でも、実験動物福祉についての施策が、すでにさまざまな形で書き込まれています。
これを見れば、すでに多くの自治体が実験動物福祉の担い手としての自覚を持っていることがわかります。
国の基本指針
国の動物愛護管理基本指針は、2005年の法改正によって制定が新しく定められたものです。
正式には、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」という長い名前ですが、この指針には、動物愛護法の対象はペットだけではないことがきちんと明記されています。そして、「実験動物の適正な取扱いの推進」の項目が定められていることも、私たちは今一度思い出す必要があるのではないかと思います。
特に、「講ずべき施策」として、下記の2点が挙げられている点は重要です。
(ア)関係省庁、団体等と連携しつつ、「3Rの原則」や実験動物の飼養保管等基準の周知が、効果的かつ効率的に行われるようにすること。
(イ)国は、実験動物の飼養保管等基準の遵守状況について定期的な実態把握を行うこと。
自治体の推進計画
各都道府県の推進計画は、やはり2005年の法改正で新たに動物愛護法に盛り込まれたもので、上記の動物愛護管理基本指針に即して定めるべきとされています。
全国47都道府県のすべてが計画策定を終えていますが、そのうち、実験動物について全く言及していなかった自治体は、宮城県、熊本県、宮崎県の3県だけです。
意外なことかもしれませんが、実に多くの自治体が、実験動物の適正飼養の推進等の施策を推進計画に盛り込んだのです。
その内容の多くは、3Rの原則や基準の普及啓発等に限られた内容ではあり、物足りなく感じられる向きもあるかもしれませんが、「する」と書いてあるのと、いないのとでは大きな違いがあります。
というのも、これによって私たちは、自治体の動物愛護行政が、実験動物も自分たちの仕事の範疇だと考えていることを明確に知ることができたからです。
資料集では、各自治体の該当部分を抜粋していますので、力の入れ具合がどの程度かという違いもわかります。
特徴のある自治体には例えば下記のような記述があります。
兵庫県:条例に基づく届出制、立入検査
静岡県:立入検査
徳島県:「実験動物をできる限り無くし」の文言がある
東京都:災害時対策
施設の実態把握について
実態把握のための調査を行うとしている自治体も多くあります。方法がはっきりしない自治体もありますが、アンケートなど、方法を明記しているところもあります。
合わせると約半数の自治体が何らかの実態把握について考えており、東京都が実験施設にアンケートをとるなど、すでに動きが出てきています。
また、現状での実態把握が不十分であるという認識を持っている自治体は、6自治体ありました。
実験施設は、放射線物質や毒物劇物などの危険物質を取扱っていますし、感染性微生物や遺伝子組み換え生物も保有しています。また大量の動物の死体の処理の問題もあります。もし、大地震などの災害が起こる可能性を考えたとき、自治体がこれらの施設の実態を把握していないことは、ある意味恐ろしい状態だと言えます。
今後の、自治体の取り組みに期待が寄せられます。
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