AVA-net 81号:巻頭言
動物実験の3つの弊害
<密室性・専門性・封建制>
NHKテレビの「医療ミス被害者を救え−多発する医療ミス」という番組で、近年、病院での医療ミスが多発しており、医療過誤を争う裁判が急増していることが報じられました。昨年提訴された裁判数は629件あり、現在係争中の裁判数は2700件もあるとのことです。患者の取り違えての手術、点滴薬のミス、誤診による手術ミスなどなど数え上げればキリがありませんが、裁判で被害者側が勝訴することはたいへん難しいようです。患者が裁判で直面する壁として、医療機関の3つの体質があげられていました。
1.密室性 2.専門性 3.封建制
このことは、まさに医学研究における動物実験の場合にもあてはまります。 まず、動物実験は密室の中で行われます。どのような施設で、どのような人々が、どんな実験を行っているかさえ公にされることはありません。何も規制がないのでこのようなデータさえ存在しないのです。
また、医学研究は非常に専門化、細分化しているため、動物実験も様々な分野で行われています。ある実験室でネズミの神経細胞の培養実験をしているかと思えば、隣の部屋ではネコの脳に電極を差し込んで刺激を与える実験をしていたりします。互いに隣の研究室で何が行われているか知りません。医科学研究は一つ分野が異なれば専門用語も異なりもう互いを理解できなくなるほど専門化しています。まして、専門外の一般人にはやっていることの意味さえ分かりません。
その一方で、医学研究は未だに前時代的な封建制のもとに運営されています。医科系の大学では、教授をトップにピラミッド型の組織となっていて、なかなか権威に逆らうことはできません。ただ論文を書くためだけの実験、学位や地位を得るためだけの実験がはびこり、患者の治療とは結びつかない場合がほとんどです。
前時代的な医学システムのために、多くの動物が無益に犠牲になっています。一刻も早く、動物実験の法規制がなされることが、日本の医学の改革にもつながっていくでしょう。(野上)