AVA-net 79号:巻頭言
動物実験に対して、情報公開と監視制度を!
現在、動物実験を大規模に実施している諸外国の中で、いかなる法規制も存在しない国は日本だけです。
英国ではすでに19世紀の半ばに動物実験を行う施設や実施者の免許制を制定し、1986年に「動物実験規制法(科学的処置法)」を制定しました。この法律では、従来の動物実験に関わる者と実験施設に加えて、実験計画をも免許(ライセンス)制としています。
法律上の「許可」とは、本来は誰もが自由にできる行為であっても、それが公共の利益に反する場合は、これを原則として禁止し、特定の条件を満たしたものに限って許可するという仕組みです。法に違反した場合は、免許の停止・取り上げとなるため、実質的にその行為が禁止されることになります。昨年、英国が化粧品の動物実験を廃止できたのは、化粧品に関わる実験には一切免許を与えないという措置を取ったことによります。
一方、この免許の規準が甘ければ、実質どんな実験もできるということになってしまい、法的効果が薄れます。法律に実効力を持たせるためには、法の形態(許可・免許制)よりも、免許の規準を厳しくする必要があるでしょう。
このような規準は、世論と研究機関・産業界の圧力との間のバランスによって作られます。一般に規準が甘い理由は、それが密室の中で行われており、外部からの監視、調査および情報公開がなされないために、人々の関心が低く、世論が高まらないからだと考えられます。
従って問題は、密室の中で行われる動物実験を一般の目に明らかにすること、つまり情報公開制が最も必要です。これに加えて、法的後ろ盾を持った査察員(利害関係のない第三者機関)による外部からの監視制も不可欠です。第三者の目が必要だと言うことは、どんな組織(特に行政、大企業、研究機関など)についても言えることです。これなくして、社会に大きな悪影響を与える巨大なシステムの過失や暴走をくい止めることはできません。
このような制度を前提として初めて、無益で不必要、許し難い残酷な動物実験から禁止措置を取ることのできる仕組みが成り立ります。私たちは、次の法制定に向けて、動物実験の情報公開と監視制を強く要求していきたいと思います。
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