ハーバード、スタンフォード、コロンビア、イェールなどの名門校を含む全米126校中85校の大学医学部では、カリキュラムにおける動物を使用した実習をすでに廃止し、現代的でコストの低い人道的な代替法に切り替えている。責任ある医学を目指す医師委員会(PCRM)によると、まだ動物を使用している医学部では、学生の最初の「患者」は犬で、実習に使われる犬は手術台に縛り付けられ、呼吸、血圧、心拍を計るためのモニターを付けられ、体内器官がどのように反応するかを観察するために様々な一般薬を静脈に注入される。実習途中で麻酔が切れ、覚醒した犬が痛みに叫び声をあげることもあるが、急いで追加の麻酔が与えられ、実習が終われば安楽死させられる。
実習を支持する側は、実習は医学生に自分の将来の職業が実際にどのようなものであるかを経験させる役割を果たしていると主張するが、一般薬への生体の反応というすでに分かっている事実を確認しているだけだという意見もある。また、実習を批判する側は、犬と人間では身体構造がまったく異なるので、犬の機能を理解してもそれを人間の機能には置き換えられない場合がほとんどだと指摘する。
看護婦や他の医療関係者に猫やフェレットを実験体にして呼吸用チューブの挿入を練習させる病院もあるが、これらの動物の解剖学的構造は人間のものと非常に異なるので、こういった実習は解剖用遺体や最新鋭の人体モデルを使った方法より劣るとPCRMは述べている。
すでに動物を使用した実習を廃止している医学部の中には、洗練されたコンピューター技術のおかげで生きた動物を犠牲にすることなく学生に効果的なトレーニングを提供できるようになったという結論に達した、と公式に述べているところもある。
また、緊急医療サービス・システム研究所のある講師は、これまで100以上ものトラウマ・トレーニング・コースを、犬を使用した実習、そして解剖用遺体やシミュレーターを使用した革新的な方法で指導してきた。解剖用遺体の解剖学的構造は実際の患者のものと同一であるのに対して、犬のものは標識点(他の器官や組織の位置の指標となる解剖学的構造物)が異なるため、学生は解剖用遺体を使用したコースのほうを好むということがわかった、とこの講師はいう。
イギリス国内、また世界中の多くの医学部では動物の生体を使用した医学生の実習はすでに廃止になっている。