[岩手県]
盛岡保健所を訪れて
AVA-net News No.95 (2002.111-2)
K.T.(岩手県)
ALIVE、AVA-netで行った動物行政についてのアンケート調査で、『動物愛護および管理に関する条例』も危険動物の飼育規制もない6県の中でも、唯一、今後も制定の予定なしという回答だった、という私の住む岩手県に驚き、今回野上代表が訪れた。
何とも意識の低い?!と感じさせるような回答を出した岩手県であるが、この事がきっかけとなり私も保健所、県庁への訪問に同行させていただき、大変勉強になる経験をさせていただいた。
●初めての保健所訪問
9月17日の午後、初めて保健所の収容施設の中を見学した。保健所=犬猫が殺される悲しく恐ろしい場所というイメージしか残念ながら私の中にはない。それを目の当たりにするのはとても怖く、足を踏み入れたくない、入ったとしても一匹もいなければ良いという思いで敷地内に入った。が、すぐに犬の鳴き声は聞こえてきた…。これが今の犬猫がおかれている現状だ、目を背けても何も変わらない。現実をしっかりと見据え変えていかねばならないのだと勇気を奮い起こし、施設に入った。
●窓のない施設
見学した保健所はゴミ処理場の一角にあり、古いコンクリート製の建物である。入るとすぐ、猫たちがゲージに入れられていた。その奥がガス室である。
犬舎に窓はひとつもなく、床のコンクリートは水はけが悪いため、常に濡れている状態。もちろん日の光など一切なく、風通しもなく、鉄の柵で区切られただけの犬舎。暑さ寒さへの対策、衛生面での管理ははっきり言って悪いとしか考えられないような感じであった。
実際、飼い犬がたまたま離れてしまい、保健所に入れられ、出たらパルボを発症したという話は少なからず耳にしている。訪れた日、犬舎とは別の場所に子犬が9匹いたが、愛護週間に行われる譲渡会用の子犬で、犬舎の中に入れるとパルボに感染するからで別の場所で飼育しているらしい。
●処分方法
そして処分方法。ほとんどガス室での窒息死であるが、犬舎から引き出された犬はキャスター付きの檻の中に入れられ、手作業でガス処分機の中に入れられる。処分にはだいたい1時間位かけ、苦しめずに殺すという話であった。
しかし、私達が訪れた火曜、収容されていた犬猫は全部で23匹。処分は週に一度金曜日。全てをその週の金曜に処分するわけではないにしろ、金曜までには数が増えるだろうし、その間ずっと、この窓のない、パルボがまんえんしている犬舎に入れられたままというのは問題ではないだろうか。
1回につき1時間という時間をかけるというのはかなりの時間を要する。大型の犬であれば一匹しか入らないガス室で、数匹一度に入れる場合もあるにしろ本当にそれだけの時間をかけるのが可能なのか、疑問に思う。
また、たとえガスでの処分が苦しまずに「体」は死に至るとしても、それまでの道のりにとてつもない恐怖や不安を感じるのであれば、「心」の面で安楽死とは言えない。安楽死の定義というのは体だけのことなのだろうか?
●行政との話し合い
保健所を後にしたその足で、県庁に条例制定について話し合いに行った。行政側の話は、何だかいかにあいまいにもっともらしい回答をするかという所に重点が置かれているように感じられた。
条例のない6県の中で、今後制定の予定もないという事に関しては、要領で定めているとのことであり、危険動物の飼育等条例を作らなくても十分な対応をしているという話がされた。
しかし、それが悪質業者の抜け道となる可能性はあるし、多頭飼育に関しては今年の春、120匹の猫が畜産農家に放置されたという問題が起きたし、その際の行政側の対応は適切とは思えないものであった。それ以外にも問題のある多頭飼育をしている人がいるという話を聞いたことがある。持ち込まれた際の受け入れ方、猫に関しての持ち込み方法等は「麻袋に入れる」ようとの指示があるが、猫を麻袋に入れるなどという行為は、行政自体が動物愛護法に違反しているのではないだろうか?
動物行政に関し、問題は山積みである。行政は隠すのではなく、公にし地域住民と共に、人にも動物にも優しい社会を目指してもらいたい。その為に私も努力していきたいと強く思った。
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