パネル展を通して捨て犬の問題を訴える
AVA-net
News No.95 (2002.11-12)
W.N.(福島県)
福島県に来て約1年が過ぎ、この土地にも大分慣れ愛着を感じ始めた。しかしながらどうしても看過できない問題がある。この辺りは犬や猫に不妊去勢手術を施している人が殆どおらず、生ませては川に流したり山に捨てたりする悪習がまかり通っている。子供たちに与える悪影響ははかり知れない。今回、このような現状を少しでも変えることを目的に、「いのちに優しい社会をつくろう」と呼びかけ、不妊去勢の必要性や里親探しのアドバイスなどもあわせてアピールした。
9月21日(土)〜23日(月)に福島県県南地区で初めてのこのパネル展を、ジャスコの催事場という恵まれた環境で開催することができた。スペースはエスカレーターのすぐ前、フロアにはずらりと衣料品店やおもちゃ店などが並んでおり、こんな素晴らしい場所でパネル展ができるのかと思うと緊張するほどだった。
パネルを掛けるものなどは全てこちらで用意することが条件だったので、高さ2メートルほどある支柱8本とその支柱を支える台を急遽作成した。当日はそれらの支柱に太い金属棒を渡してパネルやポスター、のぼりなどを掛けた。広さ6、7畳分を囲って外側から7枚のカーテンで覆いをした。
当日、入ってくれる人々は期待したほどではなかったが、それでも1日平均70〜80名には見てもらえたと思う。事前に地元の新聞各社、ラジオ、TV局各社にパネル展のお知らせと趣旨、目的を伝えたところ、すぐに問い合わせがあり、地元新聞2紙に、パネル展期間中にカラー写真付きで掲載された。
エスカレーター前でチラシを配りながら呼びこみをしていたが、半分以上は無関心で残りの1〜2割の人々から反応がある程度、興味を示すのは殆ど小・中学生だった。そこで犬猫に興味がなければせめて毛皮の実態だけでも知って欲しいと思い、毛皮のリーフレットを一緒に配ったところ、受け取った人々はページを開けた瞬間はっとした様子で立ち止まり、くぎ付けになりながらそれを見つめていた。
なにより、事前にお知らせしておいた保健所の職員の方2名が見に来て下さったこと、そして保健所が発足した動物愛護ボランティアの会の方4名が応援に駆け付けて下さったことに感激した。保健所の方々には私たちの活動をご理解、ご協力いただいており、またこの機会に知り合えたボランティアの方々からも、今後もさまざまな形でご支援、ご協力をいただけることになった。準備は大変だったが実りある時間だったと思う。
<悲惨な捨て犬たち>
ただ、このパネル展の期間中、大変な問題を抱え込むことになってしまった。捨てられた2頭の子犬を見つけたので何とかしてくれないかという連絡を受けたのだ。
託された子犬2頭を見た時、そのあまりにも無残な姿に絶句した。おびただしいウジがまさに山のようにたかり、うごめいていたのだ。1頭の片目の中はすでにびっしりウジで埋め尽くされている。子犬はただウジに食われながら力なくうめいているだけだ。2頭とも衰弱が激しくすでに手遅れかとも思われた。すぐに電話帳をあさり獣医を探したが、あいにく祝日のため近隣はすべて通じない。幸いに栃木の知り合いの獣医は休診日でも緊急の連絡先として自宅電話番号を留守電メッセージに残している。少し遠くなるが、この獣医に診てもらおうと連絡したところ、すぐに連れてきて欲しいといわれて、高速を飛ばした。
子犬たちは極度に弱り苦しそうにうめき声を上げている。もう安楽死しかないと覚悟もしたが、一方でこんな酷い目に合わせた非情な人間に言いようのない怒りを覚え、絶対に死なせてはならない、どうか生き延びて欲しいと祈るような気持ちだった。
病院に着き、獣医さんと私たち3人ですぐさまウジを取り除く作業にとりかかった。後から後から絶え間なく出てくるウジは、流れるお湯で20分洗い続けても、クシでいくらすいても取り切れない。片目がやられた子は、耳の中までウジがびっしりと詰まっており、目や耳からピンセットでかきだすようにして取り除くのだが、ただれて腫れあがった傷口に触れるたびに残された最後の力を振り絞って悲痛な悲鳴をあげる。激痛が原因で、肛門から腸が5ミリほど飛び出る「脱肛」という症状まで引き起こしてしまった。
ほぼ取り終わるのに、4人がかりで2時間も要した。その後栄養剤、ビタミン剤、抗生物質を皮下注射し、あとは子犬たちの生命力にかけるだけだった。ミルクを飲む力も残っていなかったので、注射器で口の中に流しこみながら、深夜まで無数の傷口に潜むウジを取り除きつづけた。良心的な獣医さんのご協力と私たちの苦労のかいあって、今は順調に回復してきており、ミルクもたくさん飲めるようになった。一頭は片目がつぶれてしまったがすこぶる元気である。もう1頭は尻尾を切断しなければならなかったが、幸いなことに目の傷が浅く、両目とも回復しそうだ。
ひどい目に会わされながらもこの子たちは生き延びることができたが、このような悲惨な命がこの世にどれほどあるのだろう。この子たちの受けた傷跡を写真に収めたので、機会あるたびに捨て犬や捨て猫の悲惨な運命を人々に伝えていきたい。
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