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 HOME > 全国ネットワーク活動 > 茨城県動物指導センター訪問  
 

茨城県動物指導センター訪問

子犬も成犬も、迷い犬も引き取り犬も、同じ場所に!

 6月28日、茨城県の動物指導センターを訪れた。茨城県下の「飼えなくなった」犬と猫は、巡回車で収集され、すべてこの動物指導センターに集められる。茨城県では、千葉県に次いで2番目に処分数が多い数値となっている。

AVA-net News No.94 (2002.9-10)

記:高橋(事務局)



●老朽化した施設

 職員の説明を受けて、施設に案内していただいた。入ると、非常な悪臭に息をのむほどだった。施設は老朽化しているが、改善の予算がないと言う。

 数十匹の犬たちが5つに仕切りの中にいた。これでもこの日はすくない方と言われた。収容1日目の仕切が一番数が多く、毎日、順に送られていき、5日目にはガス室に入れられる。施設の中では、子犬と成犬が一緒に収容されている。子犬が成犬に脅え端に数頭で丸く集まって固まっているという惨い状態である。子犬が一緒なのだから勿論小型犬も大型犬も一緒に収容・処分されている。

 処分も同様で、大型犬も小型犬も成犬も子犬も成猫も子猫も皆同じひとつのガス室を使用している。

●一般譲渡ができない状態

 更におどろいたことは、捕獲犬(迷い犬)と引き取り犬(飼育放棄犬)を一緒に収容していることだ。迷子になった犬を飼い主が引き取りに来た場合でも、施設の中でダメージを受け、病気が移ってしまうことも大いに考えられる。

 新しい飼い主がまた見つかる可能性の高い犬・猫は、その他の犬・猫と一緒に収容せず、予め清潔な専用の施設等に収容し、病気の感染を防ぐ必要がある。しかしここでは衛生状態、換気状態が非常に悪く、パルボ、ジフテンバーなどの伝染病ウィルスが蔓延しているため、もともと心身共に健康で譲渡に向いている犬でも一般譲渡できない状態になっている。早急に衛生状態の改善及び譲渡可能な犬と不可能な犬との隔離が求められる。それによって譲渡数は遥かに増加すると予想される。

●一般譲渡をすすめるために

 里親譲渡のための子犬は伝染病対策のために一般の施設とは別棟の施設を設けているが、その数はセンターでの世話のしやすい数で適当に決定している。常に数頭程度の少ない数のみで、他は全て殺処分の形をとっている。

 一方、東京都や神奈川県では子犬の数が足りなくて、希望者が待ち状態だと聞く。この殺処分される子犬たちを、常時子犬の不足している近隣の自治体に委託することはできないだろうか。

 里親譲渡の犬・猫の不妊・去勢は、数頭程センターで手術しているが、獣医師会が反対しているため、里親へ譲渡後、不妊・去勢手術に関して指導勧告をするに留まることが多いとのことだ。

 これについて、当会からは、獣医学科の学生実習と提携し、センターの獣医師との協力で犬・猫の不妊去勢手術を行うという計画を提案した。アメリカでは獣医学教育のプログラムにアニマルシェルターでの不妊去勢手術を組み込んでいるところもあるという。これが実現すれば、学生にとってもセンターにとっても画期的かつ合理的なことである。

●定点回収の問題点

 猫は引き取りのみだが、麻袋を使用している。猫の部屋は非常に狭い。犬の麻袋は、定点回収の際の使用は廃止し、処分後にしか使用していないと言うが、回収車に麻袋が未だ積んである状態だった。

 定点回収というのは、全県下の市町村に犬猫の引き取り回収車が巡回してセンターに集めてくることを言う。あまりに引き取りの場所と数が多いせいか、従業員は1箇所につき5分程度で回収作業のみを黙々と行っている状態だという。回収の際捨てに来る人々に特に注意も何も促していない流れ作業であった。

 収容は捕獲、持ち込みより、定点回収の方が多い。安易な飼育放棄を考え直してもらうためには、引き取りの際に、飼い主にモラルの向上や不妊・去勢手術等に関する啓発用のチラシを配る等、注意・警告を呼びかけることが重要だが、このような定点回収のやり方では、それはたいへん難しい。

 担当者との話し合いの中で、当会では、回収の際、現場に動物愛護推進員が立ち会い、飼い主に対して、放棄の理由やもらい手探しをしたかどうかなどのアンケートを実施することを提案した。アンケートの内容は、短時間で書けるように遺棄の理由、これまでの遺棄の回数等簡潔なものとする。この他に、回収の従業員にも、飼い主への注意・警告を正しく的確に行うための勉強会や講習会も実施することを提案した。

●犬猫の来取りサービス

 犬猫の引き取りは無料で行っており、捨てる人々に対するサービスという状態である。行政は、モラルのない県民の後始末をサービスとして行うのではなく、受益者負担の原則で引き取りを有料化すべきである。

 有料化にすると、かえって捨て犬猫が増えるという主張もあるので、すでに有料化している自治体のも問い合わせ、実際に野犬・野猫が増えるかどうか実態調査をすべきである。また、センターヘの持ち込み者には積極的に収容施設を公開し、殺処分の現場にも立ち会ってもらうなどして、二度と遺棄しないよう、もしくは遺棄を思い留まらせるよう、反省を促す必要であると思う。


「動物愛護推進委員」に求めるもの

 中村(茨城県)

茨城県愛護推進委員制度

 茨城県では平成13年12月に、県庁で動物愛護推進委員の委嘱式が行われました。集まったメンバーは、以前から里親会などのボランティアに関わってきた方が62名、獣医師が24名、そして新聞、ラジオ広報を通してこの制度を知り応募した方が46名、計132名の面々です。一般公募者は、活動の抱負の作文、および事前講習会を経て選定されました。全員が知事より直接、委嘱状を手渡された後、行政側の挨拶がありました。ここ茨城県は、犬猫の殺処分数では、全国でもトップレベルであり、この愛護推進委員制度をうまく機能させ汚名を返上したいという思いが語られました。

 ここで、委嘱式に至るまでの経緯を説明いたします。

 平成13年3月6日に、まず第1回目の検討会議が開かれました。生活衛生課および動物指導センターの担当職員および県内のボランティアが出席者です。検討会議はその後数回開かれています。愛護推進委員として、何がしたいのか?何ができるのか?などについて話しあいました。そしてボランティア団体から参加できる人数を事前に把握しました。問題点としてあがったのが、一般公募についてでした。一般公募者ではレベルに差があり、活動が停滞するおそれがあるのではないか?まずは、ボランティア経験者だけでスタートして、軌道に乗ってから一般公募すべきではないか?という意見のボランティア側と、事前講習会を通して選定するので、当初から一般公募を加えたいという行政側との間にひと悶着があったのです。なにはともあれ、ここに国内で2番目となる愛護推進委員制度がスタートすることになったのです。

●講演会「愛護推進委員に何を求めるか?」

 愛護推進委員制度が発足してから半年となる、6月30日に、土浦で講演会を行いました。

 愛護推進委員は、地域別に7つのブロックに分かれて活動を始めていますが、まだ、活動にエンジンがかかった状態とはいえません。そこで、この時期に愛護推進委員や一般市民を集めて講演会および意見交換会を行おうということになったのです。愛護推進委員のHさんが、事前準備のほとんどを担当してくれて、当日は50名以上が集まりました。

 講演では、まず、篠原さんが、茨城県の現状を説明し、多くの問題点を指摘してくださいました。やはり定時定点回収は中心課題です。篠原さんたちの交渉により、毎週、5分間という引取りを、隔週、10分というように変更し、伸びた5分間で放棄しに来た人を説得しようという作戦を立てたのです。しかしなかなか5分では人の考えを変えることは難しいものです。改善した例もあげてくれました。一時、年間2500匹も指導センターから実験施設に送られていたけれど、年々減少させることができて、とうとう払い下げをなくせた点です。

 篠原さんは中学校を訪問し、茨城の現状を生徒に伝えています。打てば響く年齢の中学生は大きな問題意識をもってくれます。将来、若い力が茨城を変えていってくれるでしょう。

 続いて、野上代表が、撮影した指導センターのビデオを交え、施設の問題点を指摘されました。会場の人も、実際犬舎をみた人は少なく、老朽化した施設と不衛生な現状に驚き、そして、もうすぐ死んでいく子たちのいたいけな目をみて涙ぐみました。

 指導センターのひどい状態を見た後、全国有数といわれる豪勢な県庁へ訪問したので、より際立ったのが、税金の使い方の不条理さです。県民の世論を盛り上げ、県議を動かし、積極的に行動しなければならないと指摘されました。

 定時定点回収についても、野上代表は具体的提案をされました。現在、トラックの前で簡単な書類を書いてすぐに積み込んでいますが、ここを変更して、例えば公共施設の会議室を借りて、放棄しにくる飼い主と愛護推進委員とが机を挟んで話し合うシステムにすることなどです。また、拠点を各市町村に設けることを提案されました。さらに愛護推進委員の配置は、学校区に一名とし、学校飼育動物問題への取り組みも提案されました。

 意見交換会は、愛護推進委員を中心に活発な議論になりました。質問や意見の内容は、おおよそ以下のようでした。

・小学校の教育カリキュラムに、始めは年一度でもいいので「動物愛護」の時間を作ったりして、教育面で変えてゆけばよいのでは?

・実際に、県議をつれて、あの犬舎を視察すれば理解してくれるのでは?県議の選挙の時期であり、今行動すべきではないか?

・アニマルポリス制度(ひどい飼い主から取り上げることができる)は日本でも導入できないのか?

・愛護推進委員制度が半年間うまく進んでいなくて、多くの委員がやる気を失っている。どう打開すればよいのか?

・ぼくは、17歳であり、愛護推進委員に応募できなかった。未成年でも考え方はしっかりしているつもりである。なぜ規定が18歳以上なのか?

・公募で入ったが、ボランティアの方とちがい、知識が不足しています。難しいことはわかりませんが、なにかしたくてたまりません。

・確かに、報酬はいらないと了承してますが、活動で必要な実費くらいは補完してもらえないでしょうか?

 それぞれの質疑に対する講演者の方の応答は、的確で、且つ、解決の道を示すものであり胸がすく思いでした。会場では何度も拍手が湧きました。

 この制度では最初を走っている県であるだけに、なにかモデルとなるような取り組みを行なわなくてはなりません。今回の講演会であがった士気が冷めぬうちに、各ブロックで密な連携をとり、こころをひとつにして進んでいきたいと思っています。

 

 

 

ALIVE、生きものSOS、AVA-netの3団体が毎年行っている全国動物行政アンケート調査。みなさんのお住まいの自治体の動物行政の今を知るために、ぜひ資料集をご参考ください。

 詳しくはALIVEのサイトへ

 
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