6月初旬、福岡市長宛に実験譲渡の即時廃止を求める項目を含む、『福岡市の犬・猫殺処分を減らす方策に関する要望書』を提出したところ、その3週間後に「できるだけ早期に譲渡をなくす方向で協議を勧めていきたい」旨の回答を貰いました。そこで、そこまで決めたのなら今直ぐやめたほうがいい、と再度働きかけ、結局、要望書を提出してから5週間後に「今年いっぱいで廃止する旨先方に伝えました」との報告を受けることができました。こちらとしては、即時廃止を求めていたので、これでも若干譲歩したかたちではあるものの、この間、1通の要望書(もっとも、準備におよそ2ヶ月かかりましたが。)と2、3本の電話だけで、短期間に一つの結論を得ることができたことを率直に喜んでいます。
福岡県の殺処分が全国一だと知った日から一念発起した行政への働きかけ。これを弾みに、福岡県、そして北九州市に同様の要望書を出す予定です。
500万の人口を抱える福岡県の情況を変えることで、九州全体を変える。それが大きな目標です。九州各県の皆さんも同時進行で、地元の行政に働きかけませんか?
九州は殺処分最多地域です。しかも殆どの自治体が実験譲渡を行なっています。行政とそこに住む住民は、いわば合せ鏡のようなもの。両方の意識が変わらなければ、地域は変わりません。行政への働きかけによって、住民も変わることができるのです。
7月末、福岡県に要望書を出しました。閉鎖性は相当なものなので、県民と知事を繋ぐパイプは今のところ見出せず、県議会の関係委員会の委員に酷い現状を伝えようとしている段階です。今年限りで県下の実験譲渡を廃止に持ち込む。これが目下の目標。この目標を達成するためには、あまり時間的余裕はありませんが、たとえ残り1ヶ月でも可能性はあるのですから、皆さんも、1通の要望書から始めてみて下さい。逐次情報交換しながら、互いに成果を手に入れましょう。
生きものたちの状況ウォッチ
福岡県では平成11年度30,371匹の動物達が殺処分されており、また年間600匹をこえる動物をいまだに実験用に払い下げています。
いつもパネル展をしているメンバーと何とかこの酷い状況を改善したいと何度もミーティングを重ね、市や県に要望書を提出する準備もしていました。
そんな折、アニマース代表の瀬野さんより、動物を苦しみから救いたいという気持ちの人たちが、団体・グループ等の形態を問わずみんなで手をとり行政に働きかけていきましょうと、お声を掛けていただき大変心強くありがたい事でした。初めて瀬野さんにお会いした時、とても詳細に他の自治体の状況など調べられていることに感服いたしました。集まったメンバーとミーティングの度に、福岡独自の問題点について各自活発な意見を述べ、どのようにすれば改善できるのかを話し合いました。結果、4項目に的をしぼり要望書を作成していただき、6月6日瀬野さんを中心とした3名で福岡市へ提出しました。
●福岡市は払い下げ廃止へ
当日は市長とは直接面会は出来ず、秘書の方が対応され時間も15分と限定されました。こちらの要望に対して市側は殺処分の多さに関しては何とかしなくてはならないと思っている。いずれはゼロにしたいとも言われました。しかし具体的には、市側の対応や福岡市作成のチラシ、小冊子を見る限り、特別対策はたててないのが現状のようでしたし、実験譲渡廃止の要望にはノーコメントだったので前途多難かなと思っていました。
その直後女性議員の方とお会いし、同様に要望を見ていただきました。これらの要望について“嘆願書”という形で提出してもらえれば議会にかけることも出来るけど、これまでこのような声はきいたことがないと言われ、市民の声が届いてなかった事は反省点でした。(市長、動物行政宛にハガキ、FAX、手紙などは出していたのですが。)
後日何度かのやりとりの後、FAXで「福岡市が今年いっぱいで実験譲渡廃止!」の知らせを受け、思っていたより短い期間で決定したことに大変驚き、思わず大声で叫んでしまいました。
この先多くの動物が実験の苦しみから救われること、市が払い下げを廃止にすることが少なからず他の自治体に影響を与えるであろうことを思い、勇気がでました。後で少し冷静になった時“何で今年いっぱいなのか…明日にでもやめられないのか?”疑問に感じましたが…。
今回、1つ収穫だったのは別に議会にかけなくても、実験譲渡に関しては動物行政上層部の声1つでどうにでも出来るのがわかったことでした。
これを原動力として今後県・北九州へも働きかけていきます。
●福岡県はまだ払い下げ
これまで福岡県へは県庁へ2度、管理センターへ3度ほど足を運び、お話を伺いました。県庁ではいつも生活衛生課の小川さんが応対して下さるのですが、動物実験払い下げ廃止の件については「倫理委員会(学内)を設置しているので完全に管理は行き届いている」「払い下げをやめることは新たな処分される命をつくることだ」の一点張りで、私達が本来意図するところは全く判っていただけないのが現状です。福岡市が実験譲渡廃止にふみきっても強気の態度は変わりません。また、あろうことか猫の頭に電極をうめこむ実験について、「あれはとても苦しそうに見えるでしょ?でも実は全然痛くないんですよ。どうしても必要な実験らしいです」等と言われ、何故いつも研究者の立場にたってものを言われるのか本当に不思議です。小川さんは私たちのことを不思議と言いますが…。
県では昨年野上さんが情報開示請求されたため、譲渡先研究機関を明かしましたが、以前に伺った時はプライバシーにかかわる等の理由で教えられないと言われました。北九州市にいたっては譲渡先を把握しているにもかかわらずアンケートでは不明と答える等、動物実験への譲渡がいかに閉鎖的に取り引きされているか、改めて痛感しました。
犬猫の譲渡先研究機関
●福岡県:九州大学 産業医大
久留米医大 福岡歯科大等
●福岡市:福岡大学
●北九州市:産業医大 吉富製薬
個人獣医等
成犬譲渡の問題についても生活衛生課の課長さんは「成犬はもう、心がすさんでいる」「成犬をほしがる人などいない」という理由で、譲渡する気は全くなく、小川さん(係長)は「考えているけど…」と意見が定まらず、メスの子犬譲渡についても同様です。特に対策をたてないままはや1年が経過しています。
※福岡県ではメスは子犬を産んでまた戻ってくるという理由で、メス・オスをふりわけ、メスは全て殺処分しています。
これはもう、同じ思いの人たちが1人でも多く声をあげることしか、他に方法がないように思われます。FAXや手紙、電話1本でもいい、私1人がいろいろ言っても…と思わずに行政に声を届けてください。処分に直接携わる行政の方は被害者的な一面もあるので、批判的な態度は慎まなければいけないと思っていますし、県民のモラル自体が低いのも事実です。しかし県民の意識を向上させるよう努力するのも行政の役割の1つだと思うし、殺処分が少ない他の自治体の方も同じ条件の中で頑張ってこられたのだと思います。
現在のように公報(チラシ、小冊子、狂犬病の案内ハガキ他…)などを使い、不用犬猫引き取り案内に力を入れるようでは、モラルはますます低下する一方のような気がします。行政が手本となり民間共に意識を変換しなければならないと思うのですが。
福岡県が変われば九州が変わる。そして他の同じような自治体に与える影響も大きいと思います。そうなるとどれだけ多くの動物達が苦しみから救われることでしょうか。今後も物言えぬ子達にかわり、頑張っていきたいと思っています。
福岡市の犬猫の殺処分を減らす方策に関する要望書
1.犬猫の引き取り業務を保健所へ委託している件
(福岡市では平日の午前中毎日引取りをしており、その垣根もあまりに低く過剰なサービスが目につく。)
2.返還と一般譲渡について
(返還へよりいっそうの努力、成犬・猫にも生きる権利を)
※ 一部の管理センターでは民間ボランティアと提携し成犬譲渡も行っている。
3.実験譲渡の廃止
動物愛護行政と、動物実験が医学の進歩の役に立っているかいないかは全く別問題であること。
動物行政には命ある動物が新しい飼い主のもとでその生命をまっとう出来るような努力が求められているのであり、動物がより多く、より長く苦痛を与えるような「有効利用」を市民全体の同意を得ないまま習慣的に続けているのは大きな問題であること。
行政による犬猫の研究機関への譲渡はすでに時代遅れの慣習であり政令指定都市の中で今だ続けているのは札幌・仙台・福岡・北九州の4市だけであること。
実験に使用できるということは、一般譲渡が充分可能ということであり、その可能性を行政が奪うことは許されない。
4.ホームレス猫に関する取り組み
殺処分を減らすためには、東京や横浜が既に行っているホームレス猫・地域猫対策が不可欠である。(福岡市では猫の殺処分は全体の75%)