ALIVE、AVA-net、生きものSOSの3団体は、全国都道府県・政令指定都市・中核市(94自治体)に平成12年度における動物行政について、アンケート調査を行いました(回答率100%)。以下、その取りまとめ結果を簡単にご報告します。
1.犬猫の処分数
平成12年度の日本全国の犬猫の殺処分数は527,289匹である。平成11年度の555,282匹と比較して27,999匹の減少となった。しかし、減少したのは犬の数字で、猫の処分数は3552匹増加している。
下記のグラフは犬猫殺処分数を人口一万人あたりの犬猫殺処分数を計算したものである。これをみると、九州・四国・中国地方の地域が上位を占めている。上記の地域は、実験払い下げを20中13が行っており、一般譲の割合も京都・沖縄以外は犬は5%未満、猫はほぼ0%と低率である。処分から生かす施策への転換が望まれる。また、(子猫と成猫と分けて統計をとっている)どの自治体も子猫の引き取り数が犬・成猫に比べ格段に高い。避妊・去勢手術の浸透が望まれる。
2.動物保護(愛護)条例
動物愛護法の施行にともない、全国の自治体が従来の危険動物の条例や動物保護条例を改正または制定している。新たに動物愛護(保護)条例を制定した自治体は17、改正した自治体は23であった。
(都道府県に限ると以下のようになる)
◆危険動物の条例も、動物愛護条例もない県:
青森県、岩手県、石川県、福井県、奈良県、島根県
◆危険動物の条例のみの県:
千葉県、山梨県、長野県、岐阜県、山口県、佐賀県、長崎県、宮崎県
◆動物条例を改正(危険動物を含む)した県:
宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、三重県、滋賀県、京都府、兵庫県、広島県、福岡県、鹿児島県、沖縄県
◆新たに動物条例を制定した県:
北海道、新潟県、富山県、静岡県、愛知県、大阪府、和歌山県、鳥取県、岡山県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、大分県
3.危険動物の種類について
トラやライオンなどの人に危険な動物は、従来からも条例で飼育が許可制になっている。昨年、国が政令で飼育に許可が必要な動物の種を定めた。
ほとんどの自治体が、危険動物の種類については政令指定種のみとし、それに追加・除外している自治体は16にとどまっている。多くの自治体がマムシを除外しているのは、「マムシ酒」を作る人々を保護するためらしい。
4.特定移入種について
北海道はアライグマなどを特定「移入種」として、飼育の届け出を義務づけている。これは、逸走したペットが生態系を脅かす事態が頻発している現在、評価されるべきであろう。しかし移入種問題は全国規模で発生しており、本来は、国の法律で種を定め、飼育規制を行うべき事柄である。
5.危険動物の個体登録制
全ての自治体が危険動物の許可を施設許可としている中で、東京都だけが、飼育動物の個体登録制を義務づけている。1昨年、町田市で飼育されていたトラが人を噛み殺した事件は記憶に新しいが、無許可施設であったばかりか、どういった経緯で町田市に持ち込まれたかも不明だった。このような事件があったことから東京都は個体登録制にしたことは評価できる。しかし、何か事件が起こらないと規制がされないのでは手遅れになるし、また他の自治体においても登録制にしないと、東京から外に出た動物は追跡できないことになる。全国レベルで、個体登録制を取り入れるよう期待したい。
6.危険動物の飼育許可と除外規定
政令で中型、大型のサル類は危険動物として指定されている。ペットショップなどでサル類が売られているのを見かけたら、許可証が付いているかどうか確認する必要がある。
また、動物実験用に取引されているカニクイザル、アカゲザル、ニホンザル等の中型のサル類も飼育は許可制である。しかし、多くの自治体が動物実験施設や動物園を許可から除外している。
実験動物に限って言うと、すべての学術機関に危険動物の飼育許可を義務付けているのは埼玉県、岐阜県、兵庫県のみである。一部研究機関に許可制としているのは、北海道、和歌山県(私立医療・研究機関にのみ)、群馬県、静岡県、三重県、鳥取県(私立大学・医療研究機関のみ)、長野県(医療研究機関のみ)である。
許可制より緩やかな届け出制にとどまっているのが、北海道(大学、及び公立の医療機関)、長野県(大学)、静岡県(国公立)、宮城県、栃木県、横須賀市、岡山県である。
他の31自治体は、実験施設での危険動物の飼育には許可も届け出も不要としている。これは危険動物から住民を守るというこの制度の意味を無くしてしまうものであり、改正すべきである。
7.動物取扱業者の届出制と届出件数
改正動物愛護法にもとづき、はじめて動物取扱業者が届け出制となった。届け出業者の総数は、18,491件であった。
鳥取県・岡山市・佐世保市を除く自治体が届け出制を導入している。その中で、北海道・東京都・神奈川県・横浜市・川崎市・横須賀市・愛知県・名古屋市・兵庫県・徳島県・大阪府が取扱主任者制度を導入しており、東京都・愛知県・名古屋市が届出制より規制の厳しい登録制を導入している。
また、兵庫県は全国で唯一、動物実験施設を届け出制としている。平成12年度で県内に64の実験施設が届出されている。都道府県等は、独自に動物取扱い業や実験施設を登録制や許可制にすることは可能である。(動物愛護法第14条)
8.多頭飼育の実態
犬や猫などを多数飼育して、飼育が困難となり、病気を放置したり死なせている「多頭飼育」の事例が、全国各地で発生している。悪臭や糞尿の処理など近隣に迷惑をおよぼしているケースは行政が立ち入り調査し、改善を指導勧告することができる。48の自治体で、行政が関与した多頭飼育事例があるという実態が判明した。
9.動物愛護担当職員
ほとんどの都道府県が設置している。グラフの上位20位の自治体のうち、7つの自治体が、担当職員を設置しておらず、9の自治体は設置しているも過去3年間の多頭飼育の改善指導事例が1件も挙げられていない。動物行政の遅れがそのまま住民の意識の低さにつながっているといえよう。
10.罰則
青森・岩手・福島・千葉・石川・福井・奈良・山口・佐賀・島根を除く都道府県で罰則規定を設けている。しかし、平成12年度において罰則を与えた事例は1件もなく、この規定が真に機能しているとは言い難い。
11.動物愛護推進員
設置している自治体は横浜市・長野県・滋賀県・神戸市・姫路市・愛媛県・松山市のみ、設置予定の自治体も22にとどまっている。どの自治体もどんな形でこの制度を運用したらいいか模索中であると思われる。また、導入済み・導入予定の自治体ともに公募制をとっているのは5自治体のみで、見直しを要望したいところである。
12.まとめ
動物愛護行政を推進している自治体は、犬猫の殺処分数の低下という形で確実に成果があらわれている。逆に、殺処分数の多い自治体は、今後の努力が望まれる。
今後、中核市が増えるにともない、動物愛護推進員の設置など、地域単位でできることや、独自の施策を打ち出すなどもできるようになる。
各自治体には、以下のような施策の方向付けを明確にされることを望みたい。