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 HOME > 全国ネットワーク活動 > 実験払い下げの廃止を求める理由  
 

AVA-net全国ネット活動

私たちが、行政や研究機関に、
実験払い下げの廃止を求める理由

AVA-net News


「動物の愛護および管理に関する法律」は、動物を「いのちあるもの」と認め、広く国民の間に動物愛護の気風を高め生命尊重、友愛および平和の情操を育むことを理念とし、具体的には動物の保護・愛護の普及推進と、動物の遺棄・虐待の防止をはかることをめざしています。動物に苦痛と恐怖を与える犬猫の実験払い下げには法的根拠はなく、むしろ法の理念に反するものとして速やかに廃止されるべき悪習です。

 医科学的な研究といえども市民社会から遊離しているものではありません。私たちは、以下の理由によりペットの払い下げが廃止されるよう求めています。

ペットを実験に使うことの不当性

 私たちが行政による犬猫の実験提供の廃止を求めると、「廃止」できないとして、決まったように以下のような理由をあげてきます。

家庭で飼われていた犬や猫は、

  1. 行政から安価(タダ同然)で提供される
  2. 人に馴れていて実験用に扱いやすい
  3. ただ処分するよりは有効利用できる
  4. 他の犬猫の需要が増え、かえって犠牲数が多くなる
  5. ペットの方が個体の多様性があり実験に適している
  6. 漠然と医学研究に必要
 

等だとのことです。しかし、これらは動物保護法の観点からも一般市民の立場からも、とうてい容認できるものではありません。その理由は以下の通りです。

(1) 動物はモノではない。どうせ殺す生命だから実験に有効利用しようという考えは、本来人間を信頼し家族同様に扱われてきた動物を苦痛と恐怖に満ちた実験に転用することであり、飼い主の意志に反し、かつ人道にも反している。

(2) 法は飼い主に対して動物の終生愛情飼育を求めており、どうしても飼育が止むを得なくなった場合に限り、「法律に基づいて新しい飼い主をさがす事を大前提とし、努力しても見つからなかった場合は、やはり法律に基づいて、苦痛を与えない安楽な措置を取る」ことを求めている。

 同じ殺すのなら実験で有効利用したほうがいいという主張は、動物の受ける痛みや苦しみをまったく考えない言い方である。実験転用がもたらす苦痛と恐怖は犬猫にとって耐え難いものであり、処分方法のひとつとして実験殺を選択することは法の趣旨に反している。

(3) 医学のために払い下げペットの実験が必要というならば、その払い下げ動物を提供している無責任な飼い主もまた必要ということになる。つまり、動物の遺棄・虐待という不法行為が存在しなければ医学は向上できないということになる。動物保護団体が動物飼育のモラル向上の活動に取り組んでいる中、無責任な飼い主の存在を維持させるようなペットの実験用転用は容認できない。

(4) 払い下げはタダ同然であるため、また、殺処分される動物であったという先入観から、研究機関での扱いがずさんになりやすく、生命に対する実験者のモラルを低下させ、無駄で残酷な実験を助長することになる。

 ペットを使う実験の意味について、実験者自身も、次のように言っている。

 「払い下げの犬猫は、個体差が大きく、由来も病歴も不明。どのような病気に感染しているかもわからない」

 「保健所や管理センターの檻にはパルボや白血病などの伝染病のウイルスが蔓延しており収容された段階で感染している場合が多い」

 「捨てられ捕獲され収容されたストレスで免疫が衰え発病するケースもある」


 とすれば、このような動物を使って実験をすること自体科学的意味がなく、動物の無駄使いということになる。

(5) 実験者側は研究予算が少ないから安いペットを使うのだと主張する反面、それが入手できなければ、高い費用で他の動物を購入するからかえって犠牲数がふえるのだとも主張する。このような言い分には、実験の見直しをし、できるだけ犠牲を無くしていこうという謙虚な姿勢がまったく感じられない。

 動物が入手し難くなれば、量より質への転換をはかり、数を減らそうとするのが当然と考えられる。かけがえのない動物の生命を奪う実験者には、可能な限り動物の犠牲のない研究方法 を選択する努力を行うべき道義的かつ社会的責任がある。

(6) 実験者側は、ペットは個体差があるがゆえに実験に適していると主張する。しかし、個体差が多種多様で、年齢、病歴、由来、嗜好、遺伝的特性等一切不明のペットを使用するならば、各実験者あるいは実験室ごとに条件が一致せず、実験結果も不統一となって、科学としての再現性を期待することができない。また、ペットの個体差を人間の人種、環境、生活・労働条件、嗜好、性格、遺伝等の多様性と比較すること自体に大きな無理がある。

(7) 払い下げペットを使った実験がどれほど「有効」に役立っているのか、実験責任者の名前も秘密、実験内容も非公開、実験施設も動物保護団体には見せない、公正な第三者機関による事前審査も事後調査もなされないという現状では、その研究にどのような意義があったのかさえまったく不明である。

 実験者側の「医学研究」という大義名分さえあれば何をしても許されるという思い込みは、市民社会の声に耳を傾けようとしない傲慢・独善的なものである。

(8) 動物実験研究は密室下で行われている。実験施設における動物の状況(虐待・実験方法・実験内容・動物の運搬・飼育保管・殺処分・死体処分の方法等)やそれに関わる費用(実験規模・実験コスト・実験の成否等)については、公的機関による実態把握がほとんどなされていない。このような状況で実験者側が何を言おうと、密室の中で恐ろしい動物虐待が行われているのではないか、しかも動物の生命を無益に浪費しているのではないかという市民社会の不信感をぬぐい去ることはできない。

(9) EU(ヨーロッパ連合)ではペットを実験用に転用することを倫理的・科学的理由から禁止している。いつまでもペットの実験転用などを行っていると、動物虐待国日本という国際的イメージの低下は避けられない。実験者は可能な限りの努力をして動物の犠牲を避ける研究方法に転換するべきである。

(10) 元の飼い主や市民には実験殺の事実が知らされていない以上、実験者側にはこれらの動物一頭一頭につき、具体的にどのような実験に使用され、どのような形で殺処分されたかを、行政および元の飼い主や一般市民に対して情報を公開すべき責任がある。それができなければ、実験者は払い下げを要求するべきではない。

 

 

 

 

 

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